学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問
2021年05月16日
インプット講義を受講していただいている方からの「質問カード」で、これはという質問を取り上げて、ご質問があった事項とその回答を記載する「学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問」の7回目です。
第7回は、雇用保険法の「全国延長給付」に関する質問です。
【質問内容】
[問題] 厚生労働大臣は、雇用保険法第27条第1項に規定する全国延長給付を支給する指定期間を超えて失業の状況について政令で定める基準に照らして必要があると認めるときは、当該指定期間を延長することができる。
[解答] 〇 (法27条2項) 本肢のとおりである。厚生労働大臣は、全国延長給付の措置を決定した後において、政令で定める基準に照らして必要があると認めるときは、指定した期間(その期間がこの項の規定により延長されたときは、その延長された期間)を延長することができる。
[質問] 全国延長給付は90日が限度ですが、この問いには「措置決定後、指定した期間を延長できる」とあります。限度は90日でその範囲内で厚生労働大臣が決定するという意味なのでしょうか。
【回答】
そういう意味ではありません。
全国延長措置を決定した場合には、いつからいつまで全国延長給付を適用するかという期間を指定します。たとえば、「令和3年1月1日から令和3年6月30日の期間で、全国延長給付を実施する。」などとなります。
また、全国延長措置を決定した後において必要があると認めるときは、「指定した期間」を延長することができることとなっているため、「令和3年7月1日から10月31日まで」などと延長できます。
「限度が90日」というのは、厚生労働大臣が決定する全国延長給付の指定期間のことではなく、被保険者が雇用保険の給付を受けることができる日数を延ばせる限度(日数)のことです。
通常、所定給付日数分の基本手当をもらい終えると給付は打ち切りになりますが、全国延長給付が行われると、所定給付日数を使い切っても、90日分加算されることになりますので、全国延長給付の指定期間内であれば受給することができます。
<参考>
厚生労働大臣は、失業の状況が全国的に著しく悪化し、政令で定める基準に該当するに至った場合において、受給資格者の就職状況からみて必要があると認めるときは、その「指定する期間」内に限り、すべての受給資格者を対象として一定日数の給付日数を延長するための措置(以下「全国延長措置」という。)を決定することができる(法27条1項)。
厚生労働大臣は、全国延長措置を決定した後において必要があると認めるときは、上記により「指定した期間」を延長することができることとなっている(法27条2項)。
全国延長は、一定の期間を限って実施されるものであるから、その指定期間の末日が到来したときは、その日限りで、全国延長措置に基づき延長された給付は打ち切られる。また、全国延長措置に基づく給付日数の延長は、令第6条第2項で定める一定日数分(90日)の期間に限って受給期間が延長される(てびき52453)。
2021年05月09日
インプット講義を受講していただいている方からの「質問カード」で、これはという質問を取り上げて、ご質問があった事項とその回答を記載する「学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問」の6回目です。
第6回は、健康保険法の「出産手当金の計算」に関する質問です。
【質問内容】
過去問分析答練③社会保険の問10Aの7月6日以前98日の計算方法がよくわかりません。
7月 98日ー6日=92
6月 92日ー30日=62
5月 62日ー31日=31
4月 31日ー30日=1
故に、3月31日だが、当日起算なので「+1」で4月1日。
4月1日が7月6日以前98日となると思うのですが、実際の解答は3月31日が正答になっています。
どのように計算すればよいのでしょうか。
健康保険法のレジメの出産手当金で教えていただいた「当日起算」の方法で習得したいのですが、よろしくお願い致します。
【回答】
正しい計算を示すと次のようになります。
3月の部分を追加しています。
[やり方1]
7月:98日-6日=92日
6月:92日-30日=62日
5月:62日-31日=31日
4月:31日-30日=1日
3月:31日-1日=30日
ゆえに、3月30日であるが、当日起算なので「+1」で「3月31日」。
誤りの原因は、4月の段階での1日を、「あと1日」なので3月31日となるが、「+1」があるから「4月1日」としてしまったことです。
この場合は、「+1」しません。
また、このやり方をした場合、別の誤りも考えられ、4月の段階での1日を、「4月1日」と勘違いしてしまって、「+1」としたら「4月2日」としてしまうミスも起こり得ます。
このように(健保レジュメのように)計算する場合には、次のように、「残」という文字を入れておくことをお薦めします。
[やり方2]
7月:残98日-6日=残92日
6月:残92日-30日=残62日
5月:残62日-31日=残31日
4月:残31日-30日=残1日
3月:31日-残1日=30日
計算後の残日数が1日でも残っている際には、次の月へ行き、最後の月(この場合3月)は、「暦日数―残日数」となります。
そうすると、4月の「1日」は「4月1日」ではなく、「残1日」という意味になりますので、3月に進んで、「31日-1日=30日」とすることができ、「+1」で「3月31日」を導けます。
上記のように、「残」をいれてやれば大丈夫だと思われますが、数字が小さくなった際に、本試験のような緊張しているときには、頭が混乱してしまいがちだと思われるのであれば、次のようにする手もあります。
[やり方3]
7月:残98日-6日=残92日
6月:残92日-30日=残62日
5月:残62日-31日=残31日
4月:残31日-30日=残1日
3月:残1日-31日=マイナス30日
・・・3月30日+1日=3月31日
上記のように単純に残日数を暦上の月の日数で引いていきます。
マイナスがでたら、その「マイナス〇日」は、□月「〇日」とみなして、「+1」をして計算します。
なお、上記すべての場合の、「+1」とするのは、次の問題を解くのも同じ理論です。
[問題]
〇が10個、横に並んでいます。
図:〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
右から2つ目は左から何個目でしょうか。
図:〇〇〇〇〇〇〇〇●〇
[不正解] 10-2=8・・・左から8個目
[正解] 10-2+1=9・・・左から9個目
また、「+1」とすることが、「するんだったっけ?」となることを避けるためには、次のように考えることも可能です。
[やり方4]
7月:残98日-6日=残92日
6月:残92日-30日=残62日
5月:残62日-31日=残31日
4月:残31日-30日=残1日
残日数が1日ということは、3月は「31日」あるので、3月中のいずれかの日となる。
3月の最後の日から数えて1日だから、3月の最後の日に該当するので、「3月31日」。
たとえば、「やり方4」で計算した場合、4月まで計算した時に、仮に「残7日」と出たとすれば、試験会場で指を折りながら数えると確かです。
「3月の後ろから数えて7日目だから、3月31日(1)、30日(2)、29日(3)、28日(4)、27日(5)、26日(6)、25日(7)だから、3月25日だな。」という具合です。
なお、頭の中で、「31日、30日、29日・・・」と数え、( )内の数字は、指を折ります。
3月25日という答が出たら、最後に、25日~31日が7日間あることを「25日、26日、27日・・・、31日」と頭の中で数え、同時に指を折り、7であることを確認して、これでOKだとわかります。
この「やり方4」は、「+1」に頼らず、指を使って解答を導き出します。
この方が間違いないように思うのですが、いずれにせよ、混乱しないやり方を習得して計算するようにしてみてください。
2021年05月02日
インプット講義を受講していただいている方からの「質問カード」で、これはという質問を取り上げて、ご質問があった事項とその回答を記載する「学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問」の5回目です。
第5回は、労働基準法の判例(山梨県民信用組合事件)に関する質問です。
【質問内容】
労働基準法のテキストP196の山梨県民信用組合事件の判例3行目の「その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き」とありますが、どのようなことをいっているのでしょうか。
【回答】
労働基準法のテキストP196にある山梨県民信用組合事件のおおまかな概要としては、「A信用組合は、いくつかの合併を繰り返す中で、退職金規定が変更されたが、労働者はこれに同意しないと合併が実現できないと同意書への同意を求められたためこれに応じたところ、その後退職したXらの退職金は、変更後の支給基準の適用により0円となった。」という経緯のものです。
ここでは、労働条件の変更に対する労働者の「同意」とは、どの程度の情報提供や説明がなされなければならないかが争われました。
ご質問のあった判旨の部分を抜き出しますと、次のとおりです。
<判旨>
労働契約の内容である労働条件は、労働者と使用者との個別の合意によって変更することができるものであり、このことは、就業規則に定められている労働条件を労働者の不利益に変更する場合であっても、その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き、異なるものではないと解される。
まず、前提として、使用者が労働条件の変更を行おうとする場合、労働者が当該変更に同意していれば、労働条件は両者の合意に基づいて適法に変更されます。
ただし、当該合意は、労働基準法などの強行法規に違反したり、就業規則や労働協約の定めよりも労働者に不利な労働条件を定めたりするものであってはなりません。
したがって、判旨は、「労働契約の内容である労働条件は、労働者と使用者との個別の合意によって変更することができるものであり、このことは、就業規則に定められている労働条件を労働者の不利益に変更する場合であっても異なるものではない。」が、不利益変更する場合には、「就業規則の範囲内で」行う必要があるとしています。
すなわち、「その合意に際して就業規則の変更が必要とされることを除き、」というのは、個別の労働条件の不利益変更(しかも就業規則の基準を下回る不利益変更)に、ある労働者が合意したからといって、その際に就業規則を労働者の不利益に変更してはならないということになります。
そのような場合には、労働者の合意があっても不利益変更は認められないことになります。
ここは、労働契約法8条、9条、10条が該当します。
読み解いてみましょう。
【労働契約法8条】
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
→前提として、労使の合意で労働条件の変更ができる。
(ここでは、変更後の労働条件が労働者にとって、良くなるか、不利益になるかは問われていません。)
【労働契約法9条】
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、第10条の場合は、この限りでない。
→使用者は、「法10条に該当する場合を除き、」労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。
→逆に言うと、「法10条に該当すれば、不利益変更することができる」となります。
【労働契約法10条】
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第12条に該当する場合を除き、この限りでない。
→使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合には、個別の労働契約における労働条件の変更は労使の合意がなくてもできますが、変更後の就業規則を労働者に周知させることと、次の5要件に合理性があることが求められます。
①労働者の受ける不利益の程度
②労働条件の変更の必要性
③変更後の就業規則の内容の相当性
④労働組合等との交渉の状況
⑤その他の就業規則の変更に係る事情
これらを簡潔にまとめると、
労働条件の変更は、労使間の合意によって、不利益にも変更できるが、労基法等の法令、労働協約、就業規則の範囲内でなければならない。
労使間の合意によらない労働条件の変更が認められる場合としては、
①就業規則又は労働協約によって労働条件を変更する場合(「労働者への周知」及び「合理性の5要件」が必要)
②使用者が労働条件を変更する権限を有することが労働契約に定められている場合
があり、それぞれ、一定の要件の下で労働条件変更の効力が認められる。
となります。
2021年04月25日
インプット講義を受講していただいている方からの「質問カード」で、これはという質問を取り上げて、ご質問があった事項とその回答を記載する「学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問」の4回目です。
第4回は、「派遣労働者」に関する質問です。
【質問内容及び回答】
Q1.派遣労働者については、まず派遣会社に登録することになると思いますが、登録しているだけでは、雇用関係は発生せず、実際に派遣先で働く都度雇用関係が発生するということでよろしいでしょうか。
A1.正社員やパート・アルバイト、契約社員は勤務先企業と直接、「雇用契約」を結びますが、派遣労働者の場合は「派遣会社(派遣元企業)」と「派遣先企業」という2つの会社が登場します。派遣労働者にとって、派遣会社は雇用契約を結ぶ「雇用主」であり、派遣先企業は実際に仕事をする「勤務先」となります。
派遣会社は派遣労働者に仕事の紹介をしたり、派遣先企業との様々なやりとりや折衝、派遣労働者への給与の支払いや研修などを通じて、派遣労働者をバックアップする立場です。一方、派遣先企業は派遣労働者が実際に就業する勤務先であるため、派遣労働者に対し、直接、業務の指示・命令を行います。
派遣労働者は派遣元企業と雇用契約を結びますが、派遣会社にスタッフ登録した時点では、労働していませんので雇用契約は結ばれていません。派遣先企業が決定し、業務を開始する日に雇用契約が発生し、派遣期間の終了とともに雇用契約は終了します。
Q2.派遣労働者については派遣先の業種にかかわらず、派遣元会社の業種であるサービス業として扱うということでよろしいでしょうか。
A2.労働者派遣業は、日本標準産業分類(平成25年(2013年)10月改定) の大分類で「R.サービス業(他に分類されないもの)」とされ、中分類で「91職業紹介・労働者派遣業」とされています。中分類の説明としては、「主として労働者に職業を斡旋する事業所及び労働者派遣業を行う事業所が分類される。」とあり、主として派遣するために雇用した労働者を、派遣先事業所からその業務の遂行等に関する指揮命令を受けてその事業所のための労働に従事させることを業とする事業所を指しています。なお、主として「請負」によって各種事業を行っている事業所、「自らその業務の遂行等に関する指揮命令を行っている」事業所は、経済活動の種類によりそれぞれの産業に分類されます。
したがって、派遣労働者については派遣先の業種にかかわらず、派遣元会社の業種であるサービス業として扱うということになります。
Q3.派遣労働者の労働時間、休憩、休日については、派遣先に責任が生じるということですが、そうすると36協定や変形労働時間制の協定を派遣元と締結することに違和感を感じます。労使協定については、別物として考え、派遣先と締結する必要がある「休憩時間の一斉付与の適用除外」を例外として押さえた方がよろしいのでしょうか。
A3.労働者派遣法は、労働基準法等に関して、原則、雇用契約の当事者である派遣元事業主が責任を負うこととした上で、派遣先事業主が責任を負う場合については、例外として規定を設けています。
派遣先が責任を負う主なものとしては、公民権行使の保障(労働基準法第7条)、労働時間(同法32条)、1カ月単位の変形労働時間制(同法32条の2)、フレックスタイム制(同法32条の3)、1年単位の変形労働時間制(同法32条の4)、休憩(同法34条)、休日(同法35条)、時間外及び休日の労働(同法36条)、労働時間及び休憩の特例(同法40条)、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用除外(同法41条)等が挙げられます。
ただし、就業規則の定めについては派遣元の事業場で作成し、労使協定等の規定に関しては、派遣元の事業場で協定するように定めています。そこで、変形労働時間制やフレックスタイム制、時間外・休日労働の協定や届出の手続は、派遣元のものが適用されることとなります。すなわち、派遣元が派遣労働者の労働時間等の枠組みを決定し、派遣先がその枠組みに従って労働時間を管理することになります。
派遣先企業から受ける質問の多いものの例として、「時間外労働の上限時間については、当社(派遣先企業)の36協定に基づき、当社が直接雇用している他の労働者と同様の時間外労働を命じても構わないものでしょうか。」という類の質問です。しかし、この回答としては、「派遣先企業の36協定に基づき、時間外労働を命じることはできません。派遣元企業の36協定に基づき、時間外労働を定めてください。」となります。
Q4.労働基準法テキスト100ページに「派遣先が一斉付与の適用除外の事業に該当するときは、休憩時間を一斉に付与する必要はない」とありますが、こちらの扱いを例外としてみてよろしいでしょうか。
A4.労働基準法は休憩時間の与え方について「休憩時間は一斉に与えなければならない(労働基準法34条2項)」とし、一定の業種(運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署等)については、一斉に休憩時間与えなくてもよい旨の例外を設けています(同法40条、同則31条)。この例外が適用されない業種については、「一斉休憩の適用除外」の書面による協定を、派遣先企業で結べば、一斉に休憩を与えなくてもよいことになります。というのも、労働者派遣法は、休憩時間に関しては、「派遣先の事業のみを使用者としてみなして適用する」ことを定めているからです(労働者派遣法44条2項)。したがって、「派遣先が一斉付与の適用除外の事業に該当するときは、(必然的に)休憩時間を一斉に付与する必要はない」ことになります。この場合、一斉付与適用除外の企業に派遣労働者を派遣する際に、派遣先企業は改めて何らかの手続きをとる必要はありません。
【参考】労働者派遣法44条2項
派遣中の労働者の派遣就業に関しては、派遣先の事業のみを、派遣中の労働者を使用する事業とみなして、労働基準法第7条、第32条、第32条の2第1項、第32条の3第1項、第32条の4第1項から第3項まで、第33条から第35条まで、第36条第1項及び第6項、第40条、第41条、第60条から第63条まで、第64条の2、第64条の3、第66条から第68条まで並びに第141条第3項の規定並びに当該規定に基づいて発する命令の規定(これらの規定に係る罰則の規定を含む。)を適用する。
2021年04月18日
インプット講義を受講していただいている方からの「質問カード」で、これはという質問を取り上げて、ご質問があった事項とその回答を記載する「学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問」の3回目です。
第3回は、「法律用語」に関する質問です。
【質問内容】
学習している中で、何気なく目にする「又は」「若しくは」「及び」「並びに」の使い分けがよくわかりません。
【回答】
法律用語の「又は」「若しくは」「及び」「並びに」の捉え方についてですが、次のように考えてください。
(1)「又は」とは
「又は」というのは、英語の「or」にあたり、いずれか「1つ」という意味です。
「A又はB」というと、「AとBのどちらか1つ」ということです。
「又は」で、並べるものが3つ以上になると、最初は「、」で並べ、最後に「又は」でつなげます。
「A、B又はC」のように表現され、「AとBとCの3つのうち1つ」という意味になります。
このように、「A、B又はC」は、A、B、Cが並列にある場合に使用します。
たとえば、労働基準法3条(均等待遇)の「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」という条文は、「国籍」のみを理由に差別してもならないし、「信条」のみを理由に差別してもならないし、「社会的身分」のみを理由に差別してもならないということになります。
(2)「及び」とは
「及び」というのは、英語の「and」にあたり、「両方」という意味です。
「A及びB」というのは、「AとBの2つとも」という意味です。
「及び」で、並べるものが3つ以上になると、最初は「、」で並べ、最後に「及び」でつなげます。
「A、B及びC」ということになり、「AとBとCの3つとも」という意味になります。
このように、「A、B及びC」は、A、B、Cが並列にある場合に使用します。
例 <自由利用の適用除外>
次のいずれかに該当する者については、休憩時間の自由利用の原則が適用されない(法40 条、則 33 条)。
(a) 警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員及び児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
(b) 乳児院、児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
(3)「又は」と「若しくは」の違い
「若しくは」は、「又は」と同じで、英語の「or」にあたり、いずれか「1つ」という意味で、共に選択的接続詞と呼ばれます。
ただ、この2つは厳密に使い分けられています。
選択的接続の段階が2段階になる場合、例えば、A又はBというグループがあって、これにCというものを対比しなければならない場合は、
(A若しくはB)又はC
というように、小さい接続の方に「若しくは」を使い、大きい接続の方に「又は」を使います。
小さいグループが3つ以上で構成される場合は、次の様に「、」で並べ、最後に「若しくは」が付きます。
(A、B若しくはC)又はD
たとえば、「運輸交通業又は郵便若しくは信書便の事業」の意味合いは次のようになります。
運輸交通業
又は
郵便若しくは信書便の事業 ←同じグループ
要するに、「A、B又はC」と「A又はB若しくはC」という場合、結局A、B、Cの3つのうち、1つという意味ですから、どちらの表現でもよさそうですが、2段階に分けた場合、グループ分けをすることによって、分かりやすく分類しているということになります。
(4)「及び」と「並びに」の違い
「並びに」は、「及び」と同じで、英語の「and」にあたり、「いずれも」という意味で、共に併合的接続詞と呼ばれます。
そして、「又は」の場合と同様に、併合的接続が2段階に分かれることがあります。この場合には、「及び」に加えて、「並びに」というのを使います。
ただ、選択的接続の「又は」「若しくは」の場合と異なり、「及び」というのは小さい接続に使い、「並びに」は大きな接続に使われます。
「(A及びB)並びにC」という具合です。
並列に並べるものが多くなると、「(A、B、C及びD)並びにE」のようになります。
例 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(5)たすき掛け
たすき掛けというのは、「A又はBについてC又はD」というような表現です。
わかりやすくカッコでくくると「(A又はB)について(C又はD)」という表現になります。
この場合、基本的には、「AについてC」、「AについてD」、「BについてC」、「BについてD」の4つから成り立ちます。
例 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則の作成又は変更について、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。
この場合、次の①or②or③or④となります。
①就業規則の「作成」について、「労働者の過半数で組織する労働組合」の意見を聴かなければならない。
②就業規則の「作成」について、「労働者の過半数を代表する者」の意見を聴かなければならない。
③就業規則の「変更」について、「労働者の過半数で組織する労働組合」の意見を聴かなければならない。
④就業規則の「変更」について、「労働者の過半数を代表する者」の意見を聴かなければならない。
以上のように、「又は」「若しくは」「及び」「並びに」については、「又は」「若しくは」が「いずれか1つ」、「及び」「並びに」が「すべて」とわかっていれば、それほど気にしなくても大丈夫です。