学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問

2021年04月18日

インプット講義を受講していただいている方からの「質問カード」で、これはという質問を取り上げて、ご質問があった事項とその回答を記載する「学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問」の3回目です。

第3回は、「法律用語」に関する質問です。


【質問内容】
学習している中で、何気なく目にする「又は」「若しくは」「及び」「並びに」の使い分けがよくわかりません。

【回答】

法律用語の「又は」「若しくは」「及び」「並びに」の捉え方についてですが、次のように考えてください。

(1)「又は」とは

「又は」というのは、英語の「or」にあたり、いずれか「1つ」という意味です。
「A又はB」というと、「AとBのどちらか1つ」ということです。

「又は」で、並べるものが3つ以上になると、最初は「、」で並べ、最後に「又は」でつなげます。
「A、B又はC」のように表現され、「AとBとCの3つのうち1つ」という意味になります。
このように、「A、B又はC」は、A、B、Cが並列にある場合に使用します。

たとえば、労働基準法3条(均等待遇)の「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」という条文は、「国籍」のみを理由に差別してもならないし、「信条」のみを理由に差別してもならないし、「社会的身分」のみを理由に差別してもならないということになります。


(2)「及び」とは

「及び」というのは、英語の「and」にあたり、「両方」という意味です。
「A及びB」というのは、「AとBの2つとも」という意味です。


「及び」で、並べるものが3つ以上になると、最初は「、」で並べ、最後に「及び」でつなげます。
「A、B及びC」ということになり、「AとBとCの3つとも」という意味になります。
このように、「A、B及びC」は、A、B、Cが並列にある場合に使用します。

例 <自由利用の適用除外>
次のいずれかに該当する者については、休憩時間の自由利用の原則が適用されない(法40 条、則 33 条)。
(a) 警察官、消防吏員、常勤の消防団員、准救急隊員及び児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者
(b) 乳児院、児童養護施設及び障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者


(3)「又は」と「若しくは」の違い

「若しくは」は、「又は」と同じで、英語の「or」にあたり、いずれか「1つ」という意味で、共に選択的接続詞と呼ばれます。
ただ、この2つは厳密に使い分けられています。
選択的接続の段階が2段階になる場合、例えば、A又はBというグループがあって、これにCというものを対比しなければならない場合は、

(A若しくはB)又はC

というように、小さい接続の方に「若しくは」を使い、大きい接続の方に「又は」を使います。
小さいグループが3つ以上で構成される場合は、次の様に「、」で並べ、最後に「若しくは」が付きます。

(A、B若しくはC)又はD

たとえば、「運輸交通業又は郵便若しくは信書便の事業」の意味合いは次のようになります。
運輸交通業
又は
郵便若しくは信書便の事業 ←同じグループ

要するに、「A、B又はC」と「A又はB若しくはC」という場合、結局A、B、Cの3つのうち、1つという意味ですから、どちらの表現でもよさそうですが、2段階に分けた場合、グループ分けをすることによって、分かりやすく分類しているということになります。


(4)「及び」と「並びに」の違い

「並びに」は、「及び」と同じで、英語の「and」にあたり、「いずれも」という意味で、共に併合的接続詞と呼ばれます。
そして、「又は」の場合と同様に、併合的接続が2段階に分かれることがあります。この場合には、「及び」に加えて、「並びに」というのを使います。

ただ、選択的接続の「又は」「若しくは」の場合と異なり、「及び」というのは小さい接続に使い、「並びに」は大きな接続に使われます。
「(A及びB)並びにC」という具合です。
並列に並べるものが多くなると、「(A、B、C及びD)並びにE」のようになります。

例 賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項


(5)たすき掛け

たすき掛けというのは、「A又はBについてC又はD」というような表現です。
わかりやすくカッコでくくると「(A又はB)について(C又はD)」という表現になります。
この場合、基本的には、「AについてC」、「AについてD」、「BについてC」、「BについてD」の4つから成り立ちます。

例 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則の作成又は変更について、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。

この場合、次の①or②or③or④となります。
①就業規則の「作成」について、「労働者の過半数で組織する労働組合」の意見を聴かなければならない。
②就業規則の「作成」について、「労働者の過半数を代表する者」の意見を聴かなければならない。
③就業規則の「変更」について、「労働者の過半数で組織する労働組合」の意見を聴かなければならない。
④就業規則の「変更」について、「労働者の過半数を代表する者」の意見を聴かなければならない。


以上のように、「又は」「若しくは」「及び」「並びに」については、「又は」「若しくは」が「いずれか1つ」、「及び」「並びに」が「すべて」とわかっていれば、それほど気にしなくても大丈夫です。




2021年04月11日

インプット講義を受講していただいている方からの「質問カード」で、これはという質問を取り上げて、ご質問があった事項とその回答を記載する「学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問」の2回目です。

第2回は、「労働基準法」の「1週間単位の非定型的変形労働時間制」に関する質問です。


【質問内容】
1週間単位の非定型的変形労働時間制について、労働者に負担を強いる制度にもかかわらず、他の変形労働時間制と異なり、有効期間の定めが必要がないのにはどのような理由があるのでしょうか。
また、派遣労働者については1週間変形の条件である30人未満には含めないということでよろしいでしょうか。

【回答】
変形労働時間制とは、一定の期間を平均して、1週間の労働時間が法定労働時間を超えない場合には、特定の日又は週について、法定労働時間〔1日8時間、1週40時間(原則)〕を超えて労働させることができる制度で、次の4つの種類があります。
①1箇月単位の変形労働時間制
②フレックスタイム制
③1年単位の変形労働時間制
④1週間単位の非定型的変形労働時間制

この4つの種類の中で、「1週間単位」だけ「非定型的」という文言が使われていることに気が付かれることと思います。
この非定型的という言葉の意味は、「日ごとの業務に著しい繁閑の差が生ずることが多く、かつ、これを予測した上で就業規則その他これに準ずるものにより各日の労働時間を特定することが困難であると認められる事業」(法32条の5第1項)とあるとおり、日ごとの繁閑の波が「定型的」に定まっていないということです。
逆にいうと、フレックス以外の「1箇月単位」と「1年単位」の変形労働時間制は、繁閑の波が「定型的」で、その予測の元で変形期間を通じ、各日の所定労働時間を設定することができます。

対象となる事業は「小売業・旅館・料理店・飲食店」で、常時使用する労働者数が30人未満の事業であることとされています。
「30人未満」とは常態として30人未満の労働者を使用しているという意味であり、時として30人以上となる場合は除かれます。
また、派遣労働者については1週間変形の条件である30人未満には含めませんが、そもそも派遣労働者を派遣先において1週間単位の非定型的労働時間制の下で労働させることはできません(労働者派遣法44条2項)。
派遣労働者については、勤務日・勤務時間をあらかじめ確定させる必要があるため、急なシフトが入るような1週間単位の非定型的労働時間制は、派遣労働者には馴染まないとされているからです。

さて、本題に入ります。
1週間単位の非定型的変形労働時間制について、労働者に負担を強いる制度にもかかわらず、他の変形労働時間制と異なり、有効期間の定めが必要がないのにはどのような理由があるのかということですが、理由は3つあると思われます。

1つ目は、1週間単位の非定型的変形労働時間制は非定型的であり、あらかじめ繁閑の波が予測できないため、「いつから制度を開始」するかは必要ですが、「いつまで」という有効期間を定めることには馴染みません。
たとえば、飲食店の場合には、大人数での会食の予約が急に入ったりしますが、飲食店である以上、同じようにずーっと飲食を提供する業務を続けていく訳ですから、「いつまで」この状況が続くかというと、ずっとということになり終わりの期間は見込めません。
あえて言うなら、常態として30人以上の労働者を使用することになった場合には、人数が多くなった分、シフトや2交代制が機能できるようになりますから、飲食店の規模が大きくなったときが該当しますが、そうでなければ、廃業でもしない限り、いつまでも同じような形での就業になりますから、有効期間を定める必要性が薄く、その結果、有効期間の定めは無くてもよいとされていると考えられます。

2つ目ですが、変形労働時間制の代表格は、「1箇月単位」と「1年単位」の変形労働時間制です。
というのも、本来の変形労働時間制とは、「業務の繁閑を予測」して「計画的」に「労働時間を調整」していくことを想定しているからです。

ところが、1週間単位の非定型的変形労働時間制は、あらかじめ業務の繁閑が予測できないような事業が対象であり、忙しい日には10時間労働するかわりに、暇な日には労働時間を短くしたり休日にしたりすることにより、1週間単位で労働時間を単に調整しようとする制度です。
ただ単に多忙な業務を一時的にしのぐためだけに作られた制度であり、計画性に乏しく、本来あるべき姿の変形労働時間制とは主旨が異なりかけ離れているものとされています。

事実、命名が、本来あるべき「1週間単位の変形労働時間制」ではなく、「1週間単位の非定型的変形労働時間制」と、あえて「非定型的」という冠を施されていることからも、いっぱしの変形労働時間制として認められているのではなく、本来の変形労働時間制ではないんだけれども、かろうじて変形労働時間制の仲間入りを認めてあげようという「変形労働時間制もどき」とみなされていることがわかります。
これらのことから、変形労働時間制の運用の厳しい規定は要求されず、厳格に有効期間を定めなくてもよいとされているのではないかと思われます。

3つ目は、対象が30人未満の労働者を使用している「小売業・旅館・料理店・飲食店」であり、対象企業が絞られていて、しかも小規模ですから、有効期間を定めることまで要求されていないことが考えられます。
有効期間を定めた場合、有効期間が切れる前に労基署に書類を再度、提出しなければなりませんが、「小売業・旅館・料理店・飲食店」には零細企業が多く、このような煩雑な届出までを要求するのは酷です。
また、労基署としても、有効期間が切れているか否かということに目くじらをたてて、小規模な飲食業等をいちいち取り調べるのも困難かつ面倒で、有効期間切れをとがめても「失念していました。」と回答されるだけでしょうから、有効期間の定めがない方がありがたいはずです。

以上、3つの理由が考えられると思われます。
ただし、ここに記載した3つの理由は、コンメンタールや文献に載っているわけではありませんので、絶対的・公的なものでなく、いろいろ調べたり他の社労士に聞いてみたうえで話が上ったことを材料に推察したものととらえてください。



2021年04月04日

インプット講義を受講していただいている方からの「質問カード」で、これはという質問を取り上げて、ご質問があった事項とその回答をお知らせする「学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問」の第1回です。

1回目は、「労働基準法」の「フレックスタイム制のコアタイム」に関する質問です。


【質問】
労働基準法(テキスト86ページ)のフレックスタイム制について、「労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる」とありますが、始業の時刻、終業の時刻を含めた時間をコアタイムとして設定することは可能なのでしょうか。

例えば9時~18時が就業の会社において9時から10時をコアタイムとして設定することは可能なのでしょうか。

可能であるとすれば労働者の決定に委ねたことにならないのではないかと思い質問させていただきました。



【回答】
フレックスタイム制とは、労働者が日々の始業・終業時刻を労働者自身で決定して働く事ができる制度です。勤務時間をずらすことで、通勤ラッシュを避けることができたり、子供の送り迎えや身内の介護に要する時間を取れるようになるなど、労働者にメリットが大きい制度です。

フレックスタイム制には、コアタイム、フレキシブルタイムを定めることも可能であり、コアタイムとは、労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯になります。

フレックスタイム制の事例


コアタイム設けるか否かは任意ですが、これを設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。

コアタイムの時間帯は協定で自由に定めることができ、次のようなことも可能です。
① コアタイムを設ける日と設けない日がある。
② 日によって時間帯が異なる。
③ 「特定の職種の労働者」のみ定める。
④ 個人ごと、課ごと、グループごと等で異なる設定とする。

さて、ご質問の件ですが、フレックスタイム制とは、『就業規則その他これに準ずるもので「始業及び終業の時刻」を労働者の決定に委ねる旨定めること』を指しますので、始業及び終業時刻の両方を労働者の決定に委ねることが必要です。

ゆえに、例えば、始業時刻は決められていて、終業時刻のみ労働者の決定に委ねるものはフレックスタイム制には該当しません。このことから、「例えば9時~18時が就業の会社において9時から10時をコアタイムとして設定する」ということは、実質的に「始業時刻が決められていて、終業時刻のみ労働者の決定に委ねるもの」に該当することになってしまいますので、フレックスタイム制とはいえなくなります。したがって、ご質問の回答の結論としては、「例えば9時~18時が就業の会社において9時から10時をコアタイムとして設定することはできない」ことになります。

では、フレックスタイム制を導入したい会社が、なるべく始業の時刻だけは同じ時刻に設定したい場合に、「例えば9時~18時が就業の会社において9時10分からコアタイムが始まるように、フレキシブルタイムを朝10分しか設けない」ようなことが可能かといえば、これもフレックスタイム制とは認められないことになります。

このように、コアタイムの時間が1日の労働時間とほぼ同程度になるような場合や、フレキシブルタイムの時間帯が極端に短い場合など、労働者が始業及び終業の時刻を自由に決定するという趣旨に反する場合にはフレックスタイム制とはいえなくなるため、コアタイムの設定には注意が必要です。