労基

2023年11月11日

「ランチタイム・スタディ(2023本試験)」の第44問です。

44問目は、選択式の労働基準法です。

正答率68%の問題です。


<問題( 選択式 労基 C)>

最高裁判所は、マンションの住み込み管理員が所定労働時間の前後の一定の時間に断続的な業務に従事していた場合において、上記一定の時間が、管理員室の隣の居室に居て実作業に従事していない時間を含めて労働基準法上の労働時間に当たるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。

「労働基準法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない時間(以下「不活動時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである〔…(略)…〕。そして、不活動時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。したがって、不活動時間であっても C が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。

そして、当該時間において労働契約上の役務の提供が義務付けられていると評価される場合には、 C が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である」。



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step1 次の選択肢の中から答を選んでください。

⑨ 役務の提供における諾否の自由
⑪ 休業を勧奨
⑰ 当該時間の自由利用
⑳ 労働からの解放


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step2 正解は・・・



C → ⑳ 労働からの解放(平19.10.19最高裁判決大林ファシリティーズ事件)

   

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step3 コメント

・選択式の労働基準法のCは、最高裁判例「大林ファシリティーズ事件」からの出題でした。正解の「労働からの解放」は、本判例でのキーワードでもあり、ここは正解しておきたいところです。



明日もがんばりましょう。



2023年11月08日

「ランチタイム・スタディ( 2023本試験)」の第41問です。
41問目は、択一式の労働基準法です。

正答率70%の問題です。


<問題( 択一式 労基 問2 )>

〔問 2〕 労働基準法第34条(以下本問において「本条」という。)に定める休憩時間に関する次のアからオの記述のうち、正しいものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。

ア 休憩時間は、本条第2項により原則として一斉に与えなければならないとされているが、道路による貨物の運送の事業、倉庫における貨物の取扱いの事業には、この規定は適用されない。

イ 一昼夜交替制勤務は労働時間の延長ではなく二日間の所定労働時間を継続して勤務する場合であるから、本条の条文の解釈(一日の労働時間に対する休憩と解する)により一日の所定労働時間に対して1時間以上の休憩を与えるべきものと解して、2時間以上の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないとされている。

ウ 休憩時間中の外出について所属長の許可を受けさせるのは、事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも本条第3項(休憩時間の自由利用)に違反しない。

エ 本条第1項に定める「6時間を超える場合においては少くとも45分」とは、一勤務の実労働時間の総計が6時間を超え8時間までの場合は、その労働時間の途中に少なくとも45分の休憩を与えなければならないという意味であり、休憩時間の置かれる位置は問わない。

オ 工場の事務所において、昼食休憩時間に来客当番として待機させた場合、結果的に来客が1人もなかったとしても、休憩時間を与えたことにはならない。

A (アとイとウ) B(アとイとエ) C(アとエとオ)
D (イとウとオ) E(ウとエとオ)


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step1 正解は・・・


E


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step2 解説

× (法34条2項、法40条1項、則31条)「倉庫における貨物の取扱いの事業」は、休憩時間の一斉付与の原則が適用される。なお、「道路による貨物の運送の事業」は休憩時間の一斉付与の原則が適用されない。

× (法34条1項、昭23.5.10基収1582号)一昼夜交替制勤務においても、8時間を超える労働に対しては1時間以上の休憩を与えれば足りる。

(法34条3項、昭23.10.30基発1575号)本肢のとおりである。なお、本肢の許可制をとった場合、使用者は正当な理由なく許可しないことはできないと解すべきである。

(法34条1項、コンメンタール)本肢のとおりである。

(法34条、昭23.4.7基収1196号、昭63.3.14基発150号)本肢のとおりである。昼食休憩時間中来客当番をさせれば、その時間は実際に来客がなくても「労働時間」である。


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step3 コメント

・択一式の労働基準法の問2は、休憩時間に関する組合せ問題でした。アが不確かであっても、イの誤りはすぐにわかりますし、ウ、エ、オが正しいことは比較的難易度は高くないため、ここは正解したい問題です。ただし、今回、誤っているもの2つを探す組合せ問題ではなく、正しいものを3つ探す組合せ問題であったことから、戸惑った人もいたに違いありません。



次回もがんばりましょう。




2023年11月03日

「ランチタイム・スタディ( 2023本試験)」の第36問です。
36問目は、択一式の労働基準法です。

正答率74%の問題です。


<問題( 択一式 労基 問6 )>

〔問 6〕 労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 労働基準法第24条第1項に定めるいわゆる直接払の原則は、労働者と無関係の第三者に賃金を支払うことを禁止するものであるから、労働者の親権者その他法定代理人に支払うことは直接払の原則に違反しないが、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは直接払の原則に違反する。

B いかなる事業場であれ、労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出された者でないこと、という要件さえ満たせば、労働基準法第24条第1項ただし書に規定する当該事業場の「労働者の過半数を代表する者」に該当する。

C 賃金の所定支払日が休日に当たる場合に、その支払日を繰り上げることを定めることだけでなく、その支払日を繰り下げることを定めることも労働基準法第24条第2項に定めるいわゆる一定期日払に違反しない。

D 使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であっても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならないが、その支払いには労働基準法第24条第1項の規定は適用されない。

E 会社に法令違反の疑いがあったことから、労働組合がその改善を要求して部分ストライキを行った場合に、同社がストライキに先立ち、労働組合の要求を一部受け入れ、一応首肯しうる改善案を発表したのに対し、労働組合がもっぱら自らの判断によって当初からの要求の貫徹を目指してストライキを決行したという事情があるとしても、法令違反の疑いによって本件ストライキの発生を招いた点及びストライキを長期化させた点について使用者側に過失があり、同社が労働組合所属のストライキ不参加労働者の労働が社会観念上無価値となったため同労働者に対して命じた休業は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」によるものであるとして、同労働者は同条に定める休業手当を請求することができるとするのが、最高裁判所の判例である。


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step1 正解は・・・


C


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step2 解説

× (法24条1項、昭63.3.14基発150号)賃金を、労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも本条違反となり、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は無効である。

× (法24条1項ただし書、則6条の2第1項)「労働者の過半数を代表する者」に該当するためには、次のいずれの要件も満たす者でなければならない。
① 法41条2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
② 労使協定の締結当事者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出された者でないこと

(法24条2項、コンメンタール)本肢のとおりである。

× (法25条)法25条(非常時払)の規定による賃金についても、その支払いには法24条1項の規定は「適用される」。

× (昭62.7.17最高裁判決ノースウエスト航空事件)本件ストライキは、もっぱら労働組合が自らの主体的判断とその責任に基づいて行ったものとみるべきであって、会社側に起因する事象ということはできない。本件ストライキの結果、会社が同労働者に命じた休業は、会社側に起因する経営、管理上の障害によるものということはできないから、会社の責に帰すべき事由によるものということはできず、同労働者は右休業につき会社に対し「休業手当を請求することはできない」とするのが、最高裁判所の判例である。


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step3 コメント

・択一式の労働基準法の問6は、賃金等に関する問題でした。Eの判例については、わかっていないと誤りと判断できにくいものの、他の選択肢は比較的容易に正誤判断できる問題でした。



次回もがんばりましょう。




2023年11月02日

「ランチタイム・スタディ( 2023本試験)」の第35問です。
35問目は、択一式の労働基準法です。

正答率74%の問題です。


<問題( 択一式 労基 問5 )>

〔問 5〕 労働基準法に定める労働契約等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 労働基準法第14条第1項に規定する期間を超える期間を定めた労働契約を締結した場合は、同条違反となり、当該労働契約は、期間の定めのない労働契約となる。

B 社宅が単なる福利厚生施設とみなされる場合においては、社宅を供与すべき旨の条件は労働基準法第15条第1項の「労働条件」に含まれないから、労働契約の締結に当たり同旨の条件を付していたにもかかわらず、社宅を供与しなかったときでも、同条第2項による労働契約の解除権を行使することはできない。

C 使用者が労働者からの申出に基づき、生活必需品の購入等のための生活資金を貸付け、その後この貸付金を賃金から分割控除する場合においても、その貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を総合的に判断して労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合には、労働基準法第17条の規定は適用されない。

D 労働者が、労働基準法第22条に基づく退職時の証明を求める回数については制限はない。

E 従来の取引事業場が休業状態となり、発注品がないために事業が金融難に陥った場合には、労働基準法第19条及び第20条にいう「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合」に該当しない。


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step1 正解は・・・


A


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step2 解説

× (法13条、法14条1項、平15.10.22基発1022001号)法14条1項に規定する期間を超える期間を定めた労働契約を締結した場合は、同条違反となり、当該労働契約の期間は法13条により、原則3年(法14条1項1号・2号に掲げるものについては5年)となる。

(法15条2項、昭23.11.27基収3514号)本肢のとおりである。なお、労働契約締結の際に、社宅を供与する旨を契約したにもかかわらずこれを供与しなかった場合において、社宅を利用する利益が法11条にいう賃金である場合は、即時に労働契約を解除することができる。

(法17条、昭63.3.14基発150号)本肢のとおりである。法17条の規定は、前借金により身分的拘束を伴い労働が強制されるおそれがあること等を防止するため、労働することを条件とする前貸しの債権と賃金を相殺することを禁止するものであるから、使用者が労働組合との労働協約の締結あるいは労働者からの申出に基づき、生活必需品の購入等のための生活資金を貸し付け、その後この貸付金を賃金より分割控除する場合においても、貸付の原因、期間、金額、金利の有無等を総合的に判断して労働することが条件となっていないことが極めて明白な場合には、本条の規定は適用されない。

(法22条1項、平11.3.31基発169号)本肢のとおりである。

(法19条1項、法20条1項、昭63.3.14基発150号)本肢のとおりである。「やむを得ない事由」とは、天災事変に準ずる程度に不可抗力に基づきかつ突発的な事由の意であり、事業の経営者として、社会通念上採るべき必要な措置を以ってしても通常如何ともなし難いような状況にある場合をいう。


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step3 コメント

・択一式の労働基準法の問5は、労働契約等に関する問題でした。Eはすぐにわかるとして、他の肢は比較的難易度の高い問題でしたが、落ち着いて考えると正誤判断できる内容だったと思われます。



次回もがんばりましょう。




2023年10月24日

「ランチタイム・スタディ( 2023本試験)」の第24問です。

24問目は、択一式の労働基準法です。


正答率80%の問題です。


<問題( 択一式 労基 問4 )>

〔問 4〕 労働基準法の総則(第1条~第12条)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 労働基準法第2条により、「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきもの」であるが、個々の労働者と使用者の間では「対等の立場」は事実上困難であるため、同条は、使用者は労働者に労働組合の設立を促すように努めなければならないと定めている。

B 特定の思想、信条に従って行う行動が企業の秩序維持に対し重大な影響を及ぼす場合、その秩序違反行為そのものを理由として差別的取扱いをすることは、労働基準法第3条に違反するものではない。

C 労働基準法第5条に定める「監禁」とは、物質的障害をもって一定の区画された場所から脱出できない状態に置くことによって、労働者の身体を拘束することをいい、物質的障害がない場合には同条の「監禁」に該当することはない。

D 法人が業として他人の就業に介入して利益を得た場合、労働基準法第6条違反が成立するのは利益を得た法人に限定され、法人のために違反行為を計画し、かつ実行した従業員については、その者が現実に利益を得ていなければ同条違反は成立しない。

E 労働基準法第10条にいう「使用者」は、企業内で比較的地位の高い者として一律に決まるものであるから、同法第9条にいう「労働者」に該当する者が、同時に同法第10条にいう「使用者」に該当することはない。


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step1 正解は・・・


B


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step2 解説

× (法2条、コンメンタール)「使用者は労働者に労働組合の設立を促すように努めなければならない」旨の定めはない。法2条は、「対等の立場」の原則を明らかにしたのみであって、現実に労働組合があるかどうか、また、団体交渉で決定したかどうかは、「同条の問うところではない」。

(法3条、コンメンタール)本肢のとおりである。思想、信条そのものを理由として差別的取扱いをすることが本条違反になることは明らかであるが、特定の思想、信条に従って行う行動が企業の秩序維持に対し重大な影響を及ぼすような場合において、その秩序違反行為そのものを理由として差別的取扱いをする場合には、法3条違反の問題は生じない。

× (法5条、昭22.9.13発基17号、昭63.3.14基発150号)「監禁」とは、刑法220条に規定する監禁であり、一定の区画された場所から脱出できない状態に置くことによって労働者の身体の自由を拘束することをいい、「必ずしも物質的障害をもって手段とする必要はない」。暴行、脅迫、欺罔などにより労働者を一定の場所に伴い来たり、その身体を抑留し、後難を畏れて逃走できないようにすることは、その例である。

× (法6条、昭34.2.16基収8770号)法人が業として他人の就業に介入して利益を得た場合は、当該法人のために実際の介入行為を行った行為者たる従業員が処罰される。

× (法10条、コンメンタール)法10条にいう「使用者」は、企業内で比較的地位の高い取締役、工場長、部長、課長等の者から、作業現場監督員、職場責任者等といわれる比較的地位の低い者に至るまで、その権限と責任に応じて、あるいは特定の者のみが、あるいは並列的に複数の者が該当することとなる。単に地位の高低のみでは一概に使用者となるかどうかは結論づけられるものではない。また、「使用者」は、具体的事実においてその実質的責任が何人にあるかによって決まるものであるから、使用者という概念は相対的なものである。したがって、「労働者」であっても、その人が同時にある事項について権限と責任をもっていれば、その事項については、その者が「使用者」となる場合がある。



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step3 コメント

・択一式の労働基準法の問4は総則からの出題でしたが、Bが正しいと確信が持てなくても、他の肢の誤りが明確でしたから、比較的正解することは容易だったように思われます。



明日もがんばりましょう。