労基

2022年12月31日

「ランチタイム・スタディ( 2022本試験)」の第94問です。

94問目は、択一式の労働基準法です。


正答率18%の問題です。



<問題( 択一式 労基 問6 )>

〔問〕 労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。

ア 通貨以外のもので支払われる賃金も、原則として労働基準法第12条に定める平均賃金等の算定基礎に含まれるため、法令に別段の定めがある場合のほかは、労働協約で評価額を定めておかなければならない。

イ 賃金の支払期限について、必ずしもある月の労働に対する賃金をその月中に支払うことを要せず、不当に長い期間でない限り、賃金の締切後ある程度の期間を経てから支払う定めをすることも差し支えない。

ウ 労働基準法第25条により労働者が非常時払を請求しうる事由の1つである「疾病」とは、業務上の疾病、負傷であると業務外のいわゆる私傷病であるとを問わない。

エ 「労働者が賃金の支払を受ける前に賃金債権を他に譲渡した場合においても、その支払についてはなお同条〔労働基準法第24条〕が適用され、使用者は直接労働者に対し賃金を支払わなければならず、したがつて、右賃金債権の譲受人は自ら使用者に対してその支払を求めることは許されないが、国家公務員等退職手当法〔現在の国家公務員退職手当法〕による退職手当の給付を受ける権利については、その譲渡を禁止する規定がない以上、退職手当の支給前にその受給権が他に適法に譲渡された場合においては、国または公社はもはや退職者に直接これを支払うことを要せず、したがつて、その譲受人から国または公社に対しその支払を求めることが許される」とするのが、最高裁判所の判例である。

オ 労働基準法第27条に定める出来高払制の保障給について、同種の労働を行っている労働者が多数ある場合に、個々の労働者の技量、経験、年齢等に応じて、その保障給額に差を設けることは差し支えない。


A 一つ   B 二つ   C 三つ
D 四つ   E 五つ



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step1 正解は・・・



A


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step2 解説

(法12条1項、則2条1項・2項)本肢のとおりである。なお、労働協約に定められた評価額が不適当と認められる場合又は評価額が法令若しくは労働協約に定められていない場合においては、都道府県労働局長は、通貨以外のものの評価額を定めることができる(則2条3項)。

(法24条2項、コンメンタール)本肢のとおりである。法24条2項では、毎月1回以上、一定の期日の支払が定められているが、賃金の締切期間及び支払期限については明文の定めは設けていないため、本肢のような取扱いも差し支えない。

(法25条)本肢のとおりである。なお、法25条に定める「災害」には、洪水、火災等による災厄も含まれる。

× (昭43.3.12最高裁判決小倉電話局事件)「退職手当の支給前にその受給権が他に適法に譲渡された場合においても、国または公社はなお退職者に直接これを支払わなければならず、したがって、その譲受人から国または公社に対しその支払を求めることは許されない」とするのが、最高裁判所の判例である。

(法27条、コンメンタール)本肢のとおりである。なお、出来高払制の保障給の額については何ら規定していないが、法27条の趣旨は、労働者の最低生活を保障することにあるから、通常の実収賃金と余りへだたらない程度の収入が保障されるよう保障給の額を定めるべきである。大体の目安としては、少なくとも平均賃金の100分の60程度を保障することが妥当と考えられる(昭63.3.14基発150号他)。


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step3 コメント

・択一式の労働基準法の問6は、賃金等に関する個数問題でした。一つ一つの肢の難易度はそれほど高くはなくても、個数問題であることで各段に難しくなっています。誤りが一つですから、本問が誤り探しの問題であれば、正答率はかなり高くなっていたはずです。



30分後にもう1問です。
がんばりましょう。




2022年11月28日

「ランチタイム・スタディ( 2022本試験)」の第60問です。

60問目は、択一式の労働基準法です。


正答率40%の問題です。

※すみません。順番を間違えてアップしてしまいました。正答率40%なので、本来ならばもっと後にくる問題です。いったんアップしてしまったので、ここは修正せず、このままいきます。

<問題( 択一式 労基 問3 )>

〔問 3〕 労働基準法第36条(以下本問において「本条」という。)に定める時間外及び休日の労働等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 使用者が労働基準法施行規則第23条によって日直を断続的勤務として許可を受けた場合には、本条第1項の協定がなくとも、休日に日直をさせることができる。

B 小売業の事業場で経理業務のみに従事する労働者について、対象期間を令和4年1月1日から同年12月31日までの1年間とする本条第1項の協定をし、いわゆる特別条項により、1か月について95時間、1年について700時間の時間外労働を可能としている事業場においては、同年の1月に90時間、2月に70時間、3月に85時間、4月に75時間、5月に80時間の時間外労働をさせることができる。

C 労働者が遅刻をし、その時間だけ通常の終業時刻を繰り下げて労働させる場合に、一日の実労働時間を通算すれば労働基準法第32条又は第40条の労働時間を超えないときは、本条第1項に基づく協定及び労働基準法第37条に基づく割増賃金支払の必要はない。

D 就業規則に所定労働時間を1日7時間、1週35時間と定めたときは、1週35時間を超え1週間の法定労働時間まで労働時間を延長する場合、各日の労働時間が8時間を超えずかつ休日労働を行わせない限り、本条第1項の協定をする必要はない。

E 本条第1項の協定は、事業場ごとに締結するよう規定されているが、本社において社長と当該会社の労働組合本部の長とが締結した本条第1項の協定に基づき、支店又は出張所がそれぞれ当該事業場の業務の種類、労働者数、所定労働時間等所要事項のみ記入して所轄労働基準監督署長に届け出た場合、当該組合が各事業場ごとにその事業場の労働者の過半数で組織されている限り、その取扱いが認められる。




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step1 正解は・・・



B


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step2 解説

(法41条3号、昭23.3.17基発646号)断続的労働の一態様として、宿直又は日直勤務に係る所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合には、労働時間・休日・休憩に関する規定は適用されない。したがって、法36条1項の時間外労働協定に関する規定は適用されない。

× (法36条6項3号)本肢の場合、時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」が全て1月当たり80時間以内でなければならないが、「1月」「2月」及び「3月」の3か月平均で1月当たり80時間を超えるため、本肢のような時間外労働をさせることはできない。

(法36条、法37条、平11.3.31基発168号)本肢のとおりである。労働時間が通算して1日8時間又は週の法定労働時間を超えないときは、36協定及び割増賃金の支払を要しない。

(法36条、コンメンタール)本肢のとおりである。

(法36条、昭63.3.14基発150号、平2.3.31基発168号)本肢のとおりである。



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step3 コメント

・択一式の労働基準法の問3は、おそらく最初のAの正誤がわからず、Bの問題文を読んで、これが確実に誤りだと認識できれば落ち着きますが、焦ると「2~5か月平均」を出すことをせずに、C以降の問題を読みだして正解に行きつかないという結果に陥り、迷路にはまってしまう可能性がある問題だったと思われます。




明日もがんばりましょう。




2022年11月11日

「ランチタイム・スタディ( 2022本試験)」の第43問です。

43問目は、択一式の労働基準法です。


正答率65%の問題です。



<問題( 択一式 労基 問7 )>

〔問〕 労働基準法に定める労働時間等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 使用者は、労働基準法別表第1第8号(物品の販売、配給、保管若しくは賃貸又は理容の事業)、第10号のうち映画の製作の事業を除くもの(映画の映写、演劇その他興行の事業)、第13号(病者又は虚弱者の治療、看護その他保健衛生の事業)及び第14号(旅館、料理店、飲食店、接客業又は娯楽場の事業)に掲げる事業のうち常時10人未満の労働者を使用するものについては、労働基準法第32条の規定にかかわらず、1週間について48時間、1日について10時間まで労働させることができる。

B 労働基準法第32条の2に定めるいわゆる1か月単位の変形労働時間制を労使協定を締結することにより採用する場合、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出ないときは1か月単位の変形労働時間制の効力が発生しない。

C 医療法人と医師との間の雇用契約において労働基準法第37条に定める時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の合意がされていた場合、「本件合意は、上告人の医師としての業務の特質に照らして合理性があり、上告人が労務の提供について自らの裁量で律することができたことや上告人の給与額が相当高額であったこと等からも、労働者としての保護に欠けるおそれはないから、上告人の当該年俸のうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分が明らかにされておらず、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないからといって不都合はなく、当該年俸の支払により、時間外労働等に対する割増賃金が支払われたということができる」とするのが、最高裁判所の判例である。

D 労働基準法第37条第3項に基づくいわゆる代替休暇を与えることができる期間は、同法第33条又は同法第36条第1項の規定によって延長して労働させた時間が1か月について60時間を超えた当該1か月の末日の翌日から2か月以内の範囲内で、労使協定で定めた期間とされている。

E 年次有給休暇の権利は、「労基法39条1、2項の要件が充足されることによつて法律上当然に労働者に生ずる権利ということはできず、労働者の請求をまつて始めて生ずるものと解すべき」であり、「年次〔有給〕休暇の成立要件として、労働者による『休暇の請求』や、これに対する使用者の『承認』を要する」とするのが、最高裁判所の判例である。



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step1 正解は・・・



D


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step2 解説

× (法40条、則25条の2第1項)本肢の労働時間の特例に係る事業においては、1週間について「44時間」、1日について「8時間」まで労働させることができる。

× (法32条の2、コンメンタール)いわゆる1か月単位の変形労働時間制については、労使協定を届け出ていなくとも「効力は発生する」。ただし、法32条の2第2項(労使協定の届出)違反として罰則の対象になる。

× (平29.7.7最高裁判決医療法人康心会事件)「事実関係等によれば、上告人と被上告人との間においては、本件時間外規程に基づき支払われるもの以外の時間外労働等に対する割増賃金を年俸に含める旨の本件合意がされていたものの、このうち時間外労働等に対する割増賃金に当たる部分は明らかにされていなかったというのである。そうすると、本件合意によっては、上告人に支払われた賃金のうち時間外労働等に対する割増賃金として支払われた金額を確定することすらできないのであり、上告人に支払われた年俸について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。したがって、被上告人の上告人に対する年俸の支払により、上告人の時間外労働及び深夜労働に対する割増賃金が支払われたということはできない」とするのが、最高裁判所の判例である。

(法37条3項)本肢のとおりである。なお、代替休暇の単位は、1日又は半日とされており、労使協定では、その一方又は両方を代替休暇の単位として定める必要がある。

× (法39条5項、昭48.3.2最高裁判決白石営林署事件)「年次有給休暇の権利は、労働基準法に定める要件の充足により法律上当然に労働者に生じ、その具体的行使である休暇の時季指定の効果は、使用者の適法な時季変更権の行使を解除条件として成立し、労働者による休暇の請求や、これに対する使用者の承認の観念を容れる余地はなく、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である」とするのが、最高裁判所の判例である。



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step3 コメント

・択一式の労働基準法の問7は、労働時間等に関する問題でした。CやEの判例からの出題もあり、Aを含めて長文であるため、問題文を読みこなすのに時間がかかりやっかいな面はありますが、CやEの判例は十分、学習してきた内容ですからあまり間違いようが無く、Aは数字の誤りであるため、正解にたどり着くことはそれほど困難ではなかったように思われます。



明日もがんばりましょう。




2022年11月10日

「ランチタイム・スタディ( 2022本試験)」の第42問です。

42問目は、択一式の労働基準法です。


正答率66%の問題です。



<問題( 択一式 労基 問4 )>

〔問〕 労働基準法の総則(第1条~第12条)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 労働基準法第1条にいう「労働関係の当事者」には、使用者及び労働者のほかに、それぞれの団体である使用者団体と労働組合も含まれる。

B 労働基準法第3条にいう「信条」には、特定の宗教的信念のみならず、特定の政治的信念も含まれる。

C 就業規則に労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをする趣旨の規定がある場合、現実には男女差別待遇の事実がないとしても、当該規定は無効であり、かつ労働基準法第4条違反となる。

D 使用者の暴行があっても、労働の強制の目的がなく、単に「怠けたから」又は「態度が悪いから」殴ったというだけである場合、刑法の暴行罪が成立する可能性はあるとしても、労働基準法第5条違反とはならない。

E 法令の規定により事業主等に申請等が義務付けられている場合において、事務代理の委任を受けた社会保険労務士がその懈怠により当該申請等を行わなかった場合には、当該社会保険労務士は、労働基準法第10条にいう「使用者」に該当するので、当該申請等の義務違反の行為者として労働基準法の罰則規定に基づいてその責任を問われうる。



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step1 正解は・・・



C


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step2 解説

(法1条、コンメンタール)本肢のとおりである。労働関係とは、使用者・労働者間の労務提供・賃金支払を軸とする関係をいい、その当事者とは、使用者及び労働者のほかに、それぞれの団体である使用者団体と労働組合も含まれる。

(法3条、昭22.9.13発基17号)本肢のとおりである。「信条」とは、特定の宗教的もしくは政治的信念をいう。

× (法4条、平9.9.25基発648号)就業規則に労働者が女性であることを理由として、賃金について男性と差別的取扱いをする趣旨の規定があっても、現実に差別が行われていなければ、その規定は無効となるが、「法4条違反とはならない」。

(法5条)本肢のとおりである。法5条では、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制することが禁止されている。

(法10条、昭62.3.26基発169号)本肢のとおりである。なお、本肢の場合、事業主等が社会保険労務士に必要な情報を与える等申請等をしうる条件を整備していれば、通常は必要な注意義務を尽くしているものとして免責されるものと考えられるが、そのように必要な注意義務を尽くしたものと認められない場合には、両罰規定に基づき事業主等の責任をも問い得るものとされる。



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step3 コメント

・択一式の労働基準法の問4は、総則からの出題でした。やや難易度の高い肢があり、判断に迷うところではありますが、Cは通常、普通に学習する内容ですから、惑わされずに正解しておきたい問題といえます。



明日もがんばりましょう。




2022年11月09日

「ランチタイム・スタディ(2022本試験)」の第41問です。

41問目は、選択式の労働基準法です。

正答率69&69%の問題です。

※選択式労基B=69%、C=69%



<問題( 選択式 労基 BC )>

最高裁判所は、全国的規模の会社の神戸営業所勤務の大学卒営業担当従業員に対する名古屋営業所への転勤命令が権利の濫用に当たるということができるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。

「使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるものというべきであるが、転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することの許されないことはいうまでもないところ、当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であつても、当該転勤命令が  B  なされたものであるとき若しくは労働者に対し通常  C  とき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである。右の業務上の必要性についても、当該転勤先への異動が余人をもつては容易に替え難いといつた高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである。」



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step1 次の選択肢の中から答を選んでください。


Bの選択肢
⑧ 現在の業務に就いてから十分な期間をおくことなく
⑨ 他の不当な動機・目的をもつて
⑩ 当該転勤先への異動を希望する他の労働者がいるにもかかわらず
⑲ 労働者に対する事前の説明を経ることなく

Cの選択肢
⑤ 行うべき転居先の環境の整備をすることなくなされたものである
⑦ 甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである
⑪ 配慮すべき労働条件に関する措置が講じられていない
⑫ 予想し得ない転勤命令がなされたものである



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step2 正解は・・・


B → ⑨ 他の不当な動機・目的をもつて(昭61.7.14最高裁判決東亜ペイント事件)

C → ⑦ 甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである(昭61.7.14最高裁判決東亜ペイント事件)

   

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step3 コメント


・選択式の労働基準法のB及びCは、最高裁判例「東亜ペイント事件」からの出題でした。本件転勤命令には業務上の必要性が優に存在し、労働者に与える不利益も通常甘受すべき程度であり、権利を濫用したとはいえないとされましたが、落ち着いて問題文を読み判旨の内容を理解できれば難易度はそれほど高くありません。



明日もがんばりましょう。