労災

2018年02月02日

「ランチタイム・スタディ」の第83問です。

「ランチタイム・スタディ」の主旨については、10月1日の佐藤塾ブログの『「ランチタイム・スタディ2017」開始のお知らせ(ブログの記事のご案内)』をご覧ください。


さて、83問目は、択一式の労働保険徴収法です。

正答率38%の問題で、難問です。

※難問とは、合格者でも正答率が50%を割ってしまっている問題を指します。
※正答率が4割を切りました。



<問題( 択一式 徴収 災問9)>

〔問〕 社会復帰促進等事業に関する次の講述のうち、正しいものはいくつあるか。

ア 社会復帰促進等事業は、業務災害を被った労働者に関する事業であり、通勤災害を被った労働者は対象とされていない。

イ 政府は、社会復帰促進等事業のうち、事業場における災害の予防に係る事項並びに労働者の健康の保持増進に係る事項及び職業性疾病の病因、診断、予防その他の職業性疾病に係る事項に関する総合的な調査及び研究を、独立行政法人労働者健康安全機構に行わせる。

ウ アフターケアは、対象傷病にり患した者に対して、症状固定後においても後遺症状が動揺する場合があること、後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがあることから、必要に応じて予防その他の保健上の措置として診察、保健指導、検査などを実施するものである。

エ アフターケアの対象傷病は、厚生労働省令によってせき髄損傷等20の傷病が定められている。

オ アフターケアを受けるためには、健康管理手帳が必要であり、新規にこの手帳の交付を受けるには、事業場の所在地を管轄する都道府県労働局長に「健康管理手帳交付申請書」を提出することとされている。

A 一つ
B 二つ
C 三つ
D 四つ
E 五つ



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step1 正解は・・・


C


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step2 解説

ア ☓ (法29条1項) 通勤災害を被った労働者も社会復帰促進等事業の対象となる。

イ 〇 (法29条3項、独立行政法人労働者健康安全機構法12条1項3号、同法3条) 本肢のとおりである。なお、独立行政法人労働者健康安全機構は、労災病院の設置及び運営、化学物質の有害性の調査、未払賃金の立替払事業等も行うこととされている。

ウ 〇 (法29条、平28.3.30基発0330第5号) 本肢のとおりである。アフターケアは、業務災害又は通勤災害により、せき髄損傷等の傷病にり患した者にあっては、症状固定後においても後遺症状に動揺をきたす場合が見られること、後遺障害に付随する疾病を発症させるおそれがあることにかんがみ、必要に応じて予防その他の保健上の措置を講じ、当該労働者の労働能力を維持し、円滑な社会生活を営ませることを目的としている。

エ ☓ (法29条、平28.3.30基発0330第5号) 「厚生労働省令によって」という点が誤り。アフターケアの対象傷病は、①せき髄損傷、②頭頸部外傷症候群等、③尿路系障害、④慢性肝炎、⑤白内障等の眼疾患、⑥振動障害、⑦大腿骨頸部骨折及び股関節脱臼・脱臼骨折、⑧人工関節・人工骨頭置換、⑨慢性化膿性骨髄炎、⑩虚血性心疾患等、⑪尿路系腫瘍、⑫脳の器質性障害、⑬外傷による末梢神経損傷、⑭熱傷、⑮サリン中毒、⑯精神障害、⑰循環器障害、⑱呼吸機能障害、⑲消化器障害、⑳炭鉱災害による一酸化炭素中毒の20の傷病が、「実施要領」によって定められている。

オ 〇 (法29条、平28.3.30基発0330第5号) 本肢のとおりである。なお、健康管理手帳の有効期間は、傷病別実施要綱に定めるところによる。



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step3 コメント

・択一式の労働者災害補償保険法の問3は、社会復帰促進等事業に関する個数問題でした。個数問題である上に、エが超難問であり、この1肢の正誤判断は通常、できませんので、この問題に関しては、正解できなくても仕方ないと思われます。



来週もがんばりましょう。




2018年02月01日

「ランチタイム・スタディ」の第82問です。

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さて、82問目は、択一式の労働保険徴収法です。

正答率42%の問題で、難問です。

※難問とは、合格者でも正答率が50%を割ってしまっている問題を指します。



<問題( 択一式 徴収 災問9)>

〔問〕 労働保険の保険関係の成立及び消滅に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

A 労働保険の保険関係が成立している事業の事業主は、当該事業を廃止したときは、当該事業に係る保険関係廃止届を所轄労働基準監督署長文は所轄公共職業安定所長に提出しなければならず、この保険関係廃止届が受理された日の翌日に、当該事業に係る労働保険の保険関係が消滅する。

B 労災保険の適用事業が、使用労働者数の減少により、労災保険暫定任意適用事業に該当するに至ったときは、その翌日に、その事業につき所轄都道府県労働局長による任意加入の認可があったものとみなされる。

C 労災保険暫定任意適用事業の事業主は、その事業に使用される労働者の過半数が希望するときは、労災保険の任意加入の申請をしなければならず、この申請をしないときは、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる。

D 労働保険の保険関係が成立している事業の法人事業主は、その代表取締役に異動があった場合には、その氏名について変更届を所轄労働基準監督署長又は所轄公共職業安定所長に提出しなければならない。

E 労働保険の保険関係が成立している暫定任意適用事業の事業主は、その保険関係の消滅の申請を行うことができるが、労災保険暫定任意適用事業と雇用保険暫定任意適用事業で、その申請要件に違いはない。



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step1 正解は・・・


B


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step2 解説

A ☓ (法5条、法19条1項・2項) 保険関係が消滅した場合に、保険関係廃止届を提出しなければならないという規定はない。ただし、労働保険料の確定精算の手続きが必要となるため、保険関係が消滅した日から50日以内に確定保険料を申告・納付しなければならないものとされている(法19条1項)。

B 〇 (整備法5条3項) 本肢のとおりである。労災保険の強制適用事業が、事業内容の変更、使用労働者数の減少、経営組織の変更等により暫定任意適用事業に該当するに至ったときは、その翌日に、自動的に、労災保険の任意加入に係る厚生労働大臣(所轄都道府県労働局長に権限委任)の認可があったものとみなされ、保険関係は引き続き成立する。

C ☓ (整備法5条2項) 労災保険暫定任意適用事業の事業主は、その事業に使用される労働者の過半数が希望するときは、任意加入の申請をしなければならないが、この申請をしないことに対する罰則の規定は設けられていない。なお、労働者の2分の1以上が雇用保険への加入を希望したにもかかわらず、事業主が任意加入の申請をしない場合には、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられる(法附則7条1項)。

D ☓ (法4条の2第2項、則5条) 事業主の氏名等に変更があった場合には、名称、所在地等変更届を提出しなければならないが、「事業主」とは、法人にあっては法人自体を指すため、代表取締役に異動があったとしても、名称、所在地等変更届を提出する必要はない。

E ☓ (整備法8条1項・2項、法附則4条1項・2項) 保険関係消滅の申請要件には、労災保険暫定任意適用事業については、①その事業に使用される労働者の過半数の同意を得ること、②労災保険に係る保険関係が成立した後1年を経過していること、③特別保険料を徴収される期間を経過していることが必要とされ、雇用保険暫定任意適用事業においては、その事業に使用される労働者の4分の3以上の同意を得ることが必要とされるなど、違いがある。



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step3 コメント

・択一式の労働保険徴収法の労災問9は、労働保険の保険関係の成立及び消滅に関する問題でした。正解肢であるBは容易にわかるはずの肢でしたが、C及びDの難易度が高かったためか、C又はDを解答する人が多く、解答ではない肢に惑わされた感があります。このように、1肢だけの正誤判断ならできても、A~Eにまとまると他の肢の難易度に引っ張られて難しく感じてしまう傾向があります。全部の肢の正誤が完全にわからなくても、正解肢の正誤さえわかれば正解できますので、落ち着いて解くように心がけたいものです。



明日もがんばりましょう。




2018年01月24日

「ランチタイム・スタディ」の第76問です。

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さて、76問目は、択一式の労働者災害補償保険法です。

正答率48%の問題です。

※正答率が50%を切っています。


<問題( 択一式 労災 問7)>

〔問〕 労災保険制度に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 労災保険法による保険給付は、同法所定の手続により行政機関が保険給付の決定をすることにより給付の内容が具体的に定まり、受給者は、それ以前においては政府に対し具体的な一定の保険給付請求権を有しないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

B 労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使とはいえず、被災労働者又はその遺族の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

C 最高裁判所の判例においては、労災保険法第34条第1項が定める中小事業主の特別加入の制度は、労働者に関し成立している労災保険の保険関係を前提として、当該保険関係上、中小事業主又はその代表者を労働者とみなすことにより、当該中小事業主又はその代表者に対する法の適用を可能とする制度である旨解説している。

D 保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。

E 労働者が、故意に負傷、疾病、障害若しくは死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせたときは、政府は、保険給付を行わない。



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step1 正解は・・・


B


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step2 解説

A 〇 (昭29.11.26最高裁第二小法廷労働者災害補償保険金給付請求事件) 本肢のとおりである。労災保険法による保険給付は、同法所定の手続により行政機関が保険給付の決定をすることによって給付の内容が具体的に定まり、受給者は、これによって、始めて政府に対し、その保険給付を請求する具体的権利を取得するのである。したがって、受給者は、行政機関の保険給付の決定以前においては、具体的な一定の保険金給付請求権を有せず、保険給付の支払を請求することはできないものとされている。

B ☓ (平15.9.4最高裁第一小法廷労災就学援護費不支給処分取消請求事件) 労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である。なお、抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使または不行使から生じた違法状態を除去することを目的としてなされる不服申し立ての訴訟のことをいう。

C 〇 (法34条1項、平9.1.23最高裁第一小法廷姫路労基署長事件) 本肢のとおりである。事業主の特別加入の制度は、労働者に関し成立している労災保険に係る労働保険の保険関係を前提として、当該保険関係上、事業主を労働者とみなすことにより、当該事業主に対する法の適用を可能とする制度である。したがって、当該事業につき当該労働者に関する保険関係が成立していない場合には、中小事業主は特別加入することができない。

D 〇 (法12条の5第1項) 本肢のとおりである。

E 〇 (法12条の2の2第1項) 本肢のとおりである。労災事故発生の直接の原因となった行為が労働者の故意によるものである場合、業務又は通勤との因果関係が成立しないため、保険給付は行われない。



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step3 コメント

・択一式の労働者災害補償保険法の問7は、労災保険制度に関する問題でした。A、B及びCは、最高裁判例からの出題であり、A及びBは難易度が高かったため、問題文の意味がわからなかった方も多かったのではないでしょうか。一度出題された判例の問題は、その判例の意図を明確に押さえておきましょう。



明日もがんばりましょう。




2018年01月12日

「ランチタイム・スタディ」の第68問です。

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さて、68問目は、択一式の労働者災害補償保険法です。

正答率52%の問題です。



<問題( 択一式 労災 問2)>

〔問〕 傷病補償年金に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 所轄労働基準監督署長は、業務上の事由により負傷し、又は疾病にかかった労働者が療養開始後1年6か月経過した日において治っていないときは、同日以降1か月以内に、当該労働者から「傷病の状態等に関する届」に医師又は歯科医師の診断書等の傷病の状態の立証に関し必要な資料を添えて提出させるものとしている。

B 傷病補償年金の支給要件について、障害の程度は、6か月以上の期間にわたって存する障害の状態により認定するものとされている。

C 傷病補償年金の受給者の障害の程度が軽くなり、厚生労働省令で定める傷病等級に該当しなくなった場合には、当該傷病補償年金の受給権は消滅するが、なお療養のため労働できず、賃金を受けられない場合には、労働者は休業補償給付を請求することができる。

D 傷病補償年金を受ける労働者の障害の程度に変更があり、新たに他の傷病等級に該当するに至った場合には、所轄労働基準監督署長は、裁量により、新たに該当するに至った傷病等級に応ずる傷病補償年金を支給する決定ができる。

E 業務上負傷し、又は疾病にかかった労働者が、当該負傷又は疾病に係る療養の開始後3年を経過した日において傷病補償年金を受けている場合には、労働基準法第19条第1項の規定の適用については、当該使用者は、当該3年を経過した日において同法第81条の規定による打切補償を支払ったものとみなされる。



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step1 正解は・・・


D


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step2 解説

A 〇 (法12条の8第3項、則18条の2第2項) 本肢のとおりである。なお、療養開始後1年6か月を経過した日において、傷病等級に該当しないため休業補償給付を引き続き支給されることとなった労働者は、毎年、1月1日から同月末日までのいずれか日の分の休業補償給付の請求書に添えて、「傷病の状態等に関する報告書」を提出することとなっている(則19条の2第1項)。

B 〇 (法12条の8第3項、則18条2項) 本肢のとおりである。

C 〇 (法12条の8第3項、法14条1項、法18条2項) 本肢のとおりである。傷病補償年金の支給を受けていた者が、傷病等級に該当しなくなった場合は、傷病補償年金の受給権は消滅し、他の支給要件を満たす場合には、その翌月から休業補償給付が支給される。

D ☓ (法18条の2、則18条の3) 傷病補償年金を受ける労働者の当該障害の程度に変更があった場合には、「所轄労働基準監督署長の裁量により、新たに該当するに至った傷病等級に応ずる傷病補償年金を支給する決定ができる」ではなく、「所轄労働基準監督署長は、当該労働者について傷病等級の変更による傷病補償年金の変更に関する決定をしなければならない」とされている。

E 〇 (法19条) 本肢のとおりである。なお、療養の開始後3年を経過した日後において傷病補償年金を受けることとなった場合には、傷病補償年金を受けることとなった日において打切補償を支払ったものとみなされる。



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step3 コメント

・択一式の労働者災害補償保険法の問2の正解肢であるDは、語尾の違いによるものでしたから、注意深く問題文を読んでいないと、見落としてしまう場合もあるのではないでしょうか。一つ一つの肢は、学習した内容であること自体は自覚できるものだと思いますが、本試験前に再度の確認ができていたかで得点できるか否かが分かれるケースもあるように思います。



来週もがんばりましょう。




2017年12月22日

「ランチタイム・スタディ」の第57問です。

「ランチタイム・スタディ」の主旨については、10月1日の佐藤塾ブログの『「ランチタイム・スタディ2017」開始のお知らせ(ブログの記事のご案内)』をご覧ください。



さて、57問目は、択一式の労働者災害補償保険法です。

正答率60%&合否を分けた問題です。

※「合否を分けた問題」とは、「合格者だけの正答率」と「全体の正答率(ただし、全体正答率65%未満)」とで、15%以上差が開いた問題です。
※正答率がちょうど6割になりました。



<問題( 択一式 労災 問6)>

〔問〕 労災保険給付と損害賠償の関係に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 政府が被災労働者に対し労災保険法に基づく保険給付をしたときは、当該労働者の使用者に対する損害賠償請求権は、その保険給付と同一の事由については損害の填補がされたものとしてその給付の価額の限度において減縮するが、同一の事由の関係にあることを肯定できるのは、財産的損害のうちの消極損害(いわゆる逸失利益)のみであり、保険給付が消極損害の額を上回るとしても、当該超過分を、財産的損害のうちの積極損害(入院雑費、付添看護費を含む。)及び精神的損害(慰謝料)を填補するものとして、これらとの関係で控除することは許されないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

B 労働者が使用者の不法行為によって死亡し、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受けることが確定したときは、損害賠償額を算定するにあたり、当該遺族補償年金の填補の対象となる損害は、特段の事情のない限り、不法行為の時に填補されたものと法的に評価して、損益相殺的な調整をすることが相当であるとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

C 労災保険法に基づく保険給付の原因となった事故が第三者の行為により惹起され、第三者が当該行為によって生じた損害につき賠償責任を負う場合において、当該事故により被害を受けた労働者に過失があるため損害賠償額を定めるにつきこれを一定の割合で斟酌すべきときは、保険給付の原因となった事由と同一の事由による損害の賠償額を算定するには、当該損害の額から過失割合による減額をし、その残額から当該保険給付の価額を控除する方法によるのが相当であるとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

D 政府が被災労働者に支給する特別支給金は、社会復帰促進等事業の一環として、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり、被災労働者の損害を填補する性質を有するということはできず、したがって、被災労働者の受領した特別支給金を、使用者又は第三者が被災労働者に対し損害賠償すべき損害額から控除することはできないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

E 労災保険法に基づく保険給付の原因となった事故が第三者の行為により惹起された場合において、被災労働者が、示談により当該第三者の負担する損害賠償債務を免除した場合でも、政府がその後労災保険給付を行えば当該第三者に対し損害賠償を請求することができるとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。



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step1 正解は・・・


E


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step2 解説

A 〇 (昭62.7.10最高裁第二小法廷青木鉛鉄事件) 本肢のとおりである。政府が被害者に対し保険給付をしたときは、被害者が使用者に対して取得した損害賠償請求権は、保険給付と同一の事由については、損害が填補されたものとして、その給付の価額の限度において減額するものと解されるが、同一の事由の関係にあるとみられるのは民事上の財産的損害のうちの消極的損害(いわゆる逸失利益)のみであり、積極損害及び精神的損害はこれに当たらない。

B 〇 (平27.3.4最高裁大法廷フォーカスシステムズ事件) 本肢のとおりである。被害者が不法行為によって死亡した場合において、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受けることが確定したときは、制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り、その遺族補償年金の填補の対象となる損害は不法行為の時に填補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当である。

C 〇 (平1.4.11最高裁第三小法廷高田建設事件) 本肢のとおりである。本件は、民事損害賠償額を算定するに当たって、被災労働者の過失分の減額(過失相殺)について、労災保険給付を控除する前に行うべきなのか、控除した後に行うべきなのかが争点となった事案であるが、最高裁判所の判例によると、「第三者行為災害の場合において被災労働者に過失があるときの労災保険給付の原因となった事由と同一の事由による損害賠償額の算定は、損害額から過失割合による減額をし、その残額から保険給付の価額を控除する方法によるのが相当である(控除前相殺説)」とされた。

D 〇 (平8.2.23最高裁第二小法廷コック食品事件) 本肢のとおりである。社会復帰促進等事業の一環として支給される特別支給金は、被災労働者の福祉の増進を図るためのもので、損害賠償義務の履行との関係についての調整規定も置かれていないことに照らすと、被災労働者の損害を填補する性質を有するものとはいえず、これを損害賠償の額から控除することはできない。

E ☓ (昭38.6.4最高裁第三小法廷小野運送事件) 補償を受けるべき者が、第三者から損害賠償を受け又は第三者の負担する損害賠償債務を免除したときは、その限度において損害賠償請求権は消滅するのであるから、政府がその後保険給付をしても、当該第三者に対し損害賠償を請求することはできない。



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step3 コメント

・択一式の労働者災害補償保険法の問6は、労災保険給付と損害賠償の関係に関する最高裁判例からの出題でした。それぞれの問題が長文であり、その意味するところを整理しくみ取るのに時間を要します。労基や労一での判例問題は今までも多く出題されていましたが、択一式において労災における判例の出題は予期せぬ問題だったと思います。焦らず落ち着いて対応したいところです。



来週もがんばりましょう。