2016年11月01日

「ランチタイム・スタディ」の第21問です。

「ランチタイム・スタディ」の主旨については、9月29日の佐藤塾ブログの
「ランチタイム・スタディ」開始のお知らせをご覧ください。

「ランチタイム・スタディ」の活用法については、10月22日の佐藤塾ブログの「ランチタイム・スタディの活用法」をご覧ください。


さて、21問目は、昨日に引き続き、択一式の労働者災害補償保険法です。

正答率73%の問題です。




<問題(択一式労災問2)>


〔問〕 業務起因性に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 道路清掃工事の日雇い労働者が、正午からの休憩時間中に同僚と作業場内の道路に面した柵にもたれて休憩していたところ、道路を走っていた乗用車が運転操作を誤って柵に激突した時に逃げ遅れ、柵と自動車に挟まれて胸骨を骨折した場合、業務上の負傷と認められる。

B 炭鉱で採掘の仕事に従事している労働者が、作業中泥に混じっているのを見つけて拾った不発雷管を、休憩時間中に針金でつついて遊んでいるうちに爆発し、手の指を負傷した場合、業務上の負傷と認められる。

C 戸外での作業の開始15分前に、いつもと同様に、同僚とドラム缶に薪を投じて暖をとっていた労働者が、あまり薪が燃えないため、若い同僚が機械の掃除用に作業場に置いてあった石油を持ってきて薪にかけて燃やした際、火が当該労働者のズボンに燃え移って火傷した場合、業務上の負傷と認められる。

D 建設中のクレーンが未曾有の台風の襲来により倒壊するおそれがあるため、暴風雨のおさまるのを待って倒壊を防ぐ応急措置を施そうと、監督者が労働者16名に、建設現場近くの、山腹谷合の狭地にひな壇式に建てられた労働者の宿舎で待機するよう命じたところ、風で宿舎が倒壊しそこで待機していた労働者全員が死亡した場合、その死亡は業務上の死亡と認められる。

E 以前にも退勤時に約10分間意識を失ったことのある労働者が、工場の中の2℃の場所で作業している合間に暖を採るためストーブに近寄り、急な温度変化のために貧血を起こしてストーブに倒れ込み火傷により死亡した場合、業務上の死亡と認められる。




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step1 正解は・・・



B


  

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step2 解説


A 〇 (法7条1項1号、昭25.6.8基災収1252号)本肢のとおりである。休憩時間中の災害は、一般的には、業務起因性が認められず、業務災害とはされない。しかし、本件は、休憩場所がないため、交通事故の危険性のある場所で休憩せざるを得なかったため、業務上と判断された。

B ☓ (法7条1項1号、昭27.12.1基災収3907号)本件は、業務外の災害である。休憩時間中に危険物を拾ってあそぶという行為は私的行為であり、事業場施設又はその管理に起因している場合とはいえないため、業務起因性は認められない。

C 〇 (法7条1項1号、昭23.6.1基発1458号)本肢のとおりである。就業時間外であっても、事業場施設利用中、その利用に起因して災害が発生したときは、それが施設又はその管理に起因していることが証明されれば業務起因性が認められることになる。

D 〇 (法7条1項1号、昭29.11.24基収5564号)本肢のとおりである。天災地変による災害であっても、天災地変に際して災害を被りやすい業務上の事情があって、その事情と相まって発生したものと認められる場合には、業務に伴う危険が現実化したものとして業務起因性が認められる。

E 〇 (法7条1項1号、昭38.9.30基収2868号)本肢のとおりである。本件労働者は、以前にも意識を失った事実もあることから、本人の体質的欠陥に基づく脳貧血により災害発生をみたと推定されるが、本件災害は寒冷な環境における作業に関連して発生した身体異常が原因となっており、仮に脳貧血が本人の基礎疾病によるものであったとしても、脳貧血による失神と施設の状況に基づく火傷(業務上の負傷)とが相俟って死亡に対する共働の原因をなしているものと解するのが相当であるため、本件は業務災害と認められる。




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step3 コメント

・労災保険法の業務起因性に関する問題でした。A及びEもやや判断に迷うと思われますが、休憩時間中に危険物を拾ってあそぶという行為は完全に私的行為で、事業場施設又はその管理に起因している場合ともいえませんので、業務起因性は認められないという判断になります。



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step4 プラスα(一読しておこう)

1.「業務遂行性」及び「業務起因性」

労働者災害補償保険は、業務上の事由による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して保険給付を行うことを目的としている。 労働者の傷病等が「業務上の事由による負傷、疾病、障害又は死亡」であると認められるためには、「業務遂行性」及び「業務起因性」の2つの要件を満たす必要がある。


業務遂行性とは、労働者が適用事業に雇われていることを前提とし、労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態をいう。


業務起因性とは、事業主の支配下にあったことと傷病等との間に、一定の因果関係(業務に内在している危険が現実化したと経験則上認められること)があることをいう。



2.休憩時間中の災害

休憩時間中の災害は、一般的には、私的行為するものと推定され、業務起因性は認められない。
ただし、当該災害が事業場施設又はその管理に起因している場合及び就業中であれば業務起因性が肯定される用便・飲水等の生理的行為、合理的行為等は、事業主の支配下にある限り、事業主の支配下にあることに伴う行為として業務に附随する行為とみるのが相当である。




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step5 練習問題(チャレンジしてみよう!)


休憩時間中の災害

[問] 次の中で、業務外とされた例はどれか。

A 断崖絶壁の石切り場で働いていた日雇労働者が、休憩時間中水汲みに行って転落し死亡
B 休憩中に喫煙しようとしたところガソリンの染みた作業衣に引火し火傷
C 自動車運転手が食事のため道路を横断中の事故
D 休憩場所がないため道路の傍らで休憩していた道路清掃工事の日雇労働者の自動車事故
E 休憩時間中キャッチボールをしているとき銃弾にあたって受けた負傷



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step6 練習問題の解答



E



明日もがんばりましょう。

☞ 次の【ランチタイム・スタディ 22 】をご覧になりたい方はこちら




この記事へのコメント

1. Posted by MI   2016年11月01日 16:23
危険物をつついて遊ぶは講義テキスト(LEC・TAC)で見たことがありませんので、間違えました。

辰巳校のテキストには載っているんですか?

練習問題は、お決まりの過去問からで、正解でした。
2. Posted by あるぴん   2016年11月01日 20:55
step5の設問Eなんですが、「休憩時間に銃弾にあたって」とありますが、このような状況は日本国内で業務を行っている環境下で有り得るとの想定でしょうか?
休憩中に銃弾に当たるという事は、テロでも起こらない限り通常このような状況は考えにくいと思いますが?
それとも、非合法組織の中の出来事という想定でしょうか? 不法就労の外国人にも労災の適用があるのか?という問題は見たことがありますが、非合法組織の人間が違法行為を行っている場合に労災が適用になるのかという設問なのですか?
3. Posted by 管理人   2016年11月02日 10:33
MIさん、コメントありがとうございます。

佐藤塾の講座使用テキストでは、「業務上とされた例」と「業務外とされた例」を結構多く、掲載していますので、、「危険物をつついて遊ぶ」は、その中のひとつとして載せています。
講義の中でも、業務上か業務外かの判断をしっかりつけられるよう、話をしています。

練習問題の正解は、よかったですね。
4. Posted by 管理人   2016年11月02日 10:53
あるぴんさん、コメントありがとうございます。

「休憩時間に銃弾にあたって」という問題ですが、こんなことが起こりうるのかと思ってしまうのも無理はありません。
ただ、これは実際に日本であったことです。

通達は裁判で判決が出たあとに行政が出すケースが多いのですが、この通達は昭和24年に出されたもので、終戦後の時期になります。
現在の日本の治安・情勢からすると考えにくいことですが、ひとつの例として、今後の判断の参考とするように出されたものと考えていただければよいと思います。
5. Posted by あるぴん   2016年11月06日 20:40
管理人様、コメントいただき感謝です。
戦後の話となると、不意の空襲という設定はそもそも起こらないと思いますので、銃弾が飛んでくるような状況は、誰かが故意に引き金を引かない限りは起こり得ないとは思います。
その様な状況下でも「業務災害でない」との判断であれば、休憩中のために業務の拘束が発生しない時間帯に、個人的な理由か、明らかに業務でない理由で発射された銃弾にあったという解釈になるのでしょうか?
6. Posted by 管理人   2016年11月11日 19:09
あるぴんさん、コメントありがとうございます。
返答が遅くなり、すみません。
(まだかな? まだかな? と思ってましたよね。)

ここは、「明らかに業務でない理由で発射された銃弾にあった」という解釈でいいと思います。(業務とは全く関係ない人物が発砲した銃弾の流れ弾が当たってしまったような。)


そもそも休憩時間中の労働者は、自由行動を許されていますが、その労働者が事業場内で行動している限りでは、事業主の支配下にあり、「業務遂行性」はあることになります。業務上の災害となるには、「業務遂行性」と「業務起因性」の両方が無ければならないわけですから、あとは「業務起因性」が認められるかどうかがポイントになります。

※「業務遂行性」とは、「労働者が、労働契約に基づいて事業主の支配管理下にあること」をいいます。
※「業務起因性」とは、「業務(事業主の支配下にあったこと)と傷病等との間に一定の因果関係があること」をいいます。


休憩時間は、自由行動が許されていますので、労働者の個々の行為(この場合は、キャッチボール)は、私的行為になります。
(ただし、就業中であれば業務起因性が肯定される用便・飲水等の生理的行為、合理的行為等は、業務に付随する行為とされます。)
よって、このような私的行為の場合には、通常、「業務起因性」が認められません。
このような場合でも「業務起因性」が認められ、業務上災害となるためには、①事業場施設の欠陥等に起因する場合、②その災害が起こる危険性が予期できることであったと証明されることが必要になります。

銃弾が発砲されたことに関しては、①事業場施設の欠陥等に起因する場合でもなく、②その災害が起こる危険性が予期できることでもありませんでしたので、業務上災害とは認められませんでした。
7. Posted by 管理人   2016年11月11日 19:17
<あるぴんさんへの文面の追加>

このケースは、事故にあった労働者からすると、「自分に非は無いのに、そんな・・」と思うかもしれませんが、労災保険は、事業主が労働者のために加入している保険ですので、労働に関係ない事故等で保険を適用するのは、事業主としては、「ちょっと待ってくれよ!」と思うと思います。
なぜなら労災保険の保険料は、全部会社持ちですし、事故が多いと保険料が高くなることもあるからです。


<休憩時間中の災害のポイント> (ブログ本体にも記載してありますが、再度、ここで読んでいただくとよいのでは・・)
休憩時間中の災害は、一般的には、私的行為に起因するものと推定されますので、業務起因性は認められないこととなります。ただし、災害が事業場施設又はその管理に起因している場合や、就業中であれば業務起因性が肯定される用便・飲水等の生理的行為、合理的行為等は、事業主の支配下にある限り、事業主の支配下にあることに伴う行為として業務に附随する行為とみるのが相当です。


長々と書かせていただきましたが、あるぴんさんの質問の意図する返答でなかったらすみません。

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