2016年10月31日

「ランチタイム・スタディ」の第20問です。

「ランチタイム・スタディ」の主旨については、9月29日の佐藤塾ブログの
「ランチタイム・スタディ」開始のお知らせをご覧ください。

「ランチタイム・スタディ」の活用法については、10月22日の佐藤塾ブログの「ランチタイム・スタディの活用法」をご覧ください。


さて、20問目は、択一式の労働者災害補償保険法です。

正答率74%の問題です。




<問題(択一式労災問3)>


〔問〕 通勤災害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 商店が閉店した後は人通りがなくなる地下街入口付近の暗いところで勤務先からの帰宅途中に、暴漢に後頭部を殴打され財布をとられたキャバレー勤務の労働者が負った後頭部の裂傷は、通勤災害と認められる。

B 会社からの退勤の途中に、定期的に病院で、比較的長時間の人工透析を受ける場合も、終了して直ちに合理的経路に復した後については、通勤に該当する。

C 午前の勤務を終了し、平常通り、会社から約300メートルのところにある自宅で昼食を済ませた労働者が、午後の勤務に就くため12時45分頃に自宅を出て県道を徒歩で勤務先会社に向かう途中、県道脇に駐車中のトラックの脇から飛び出した野犬に下腿部をかみつかれて負傷した場合、通勤災害と認められる。

D 勤務を終えてバスで退勤すべくバス停に向かった際、親しい同僚と一緒になったので、お互いによく利用している会社の隣の喫茶店に立ち寄り、コーヒーを飲みながら雑談し、40分程度過ごした後、同僚の乗用車で合理的な経路を通って自宅まで送られた労働者が、車を降りようとした際に乗用車に追突され負傷した場合、通勤災害と認められる。

E マイカー通勤をしている労働者が、勤務先会社から市道を挟んだところにある同社の駐車場に車を停車し、徒歩で職場に到着しタイムカードを押した後、フォグライトの消し忘れに気づき、徒歩で駐車場へ引き返すべく市道を横断する途中、市道を走ってきた軽自動車にはねられ負傷した場合、通勤災害と認められる。



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step1 正解は・・・



D


  

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step2 解説


A 〇 (法7条2項、昭49.6.19基収1276号)本肢のとおりである。本件災害は、警察の活動強化地区として指定されている場所で発生しており、当該地域を深夜退勤することは、強盗や恐喝等に出会い、その結果負傷することも通常考え得ることであったため、通勤に通常伴う危険が具体化したものとして、通勤災害と認められた。

B 〇 (法7条3項、則8条、平27.3.31基発0331第21号)本肢のとおりである。「病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為」は、日常生活上必要な行為と認められ、これは、病院又は診療所において通常の医療を受ける行為に限らず、人工透析など比較的長時間を要する医療を受けることも含まれる。

C 〇 (法7条2項、昭53.5.30基収1172号)本肢のとおりである。本件災害は、その発生原因に関して、野犬を挑発するような被災労働者の積極的な恣意行為は認められないことから、経験則上通勤経路に内在すると認められる危険が具体化したものであり、通勤との間に相当因果関係が認められる。

D ☓ (法7条3項、則8条、昭49.11.15基収1867号)退勤途中、親しい同僚と、経路上の喫茶店に寄ってコーヒーを飲みながら雑談し、40分程度過ごした後の災害について、当該行為は「逸脱又は中断」に該当し、また「日常生活上必要な行為」には該当しないため、本災害は通勤災害と認められない。

E 〇 (法7条2項、昭49.6.19基収1739号)本肢のとおりである。通勤は、一般には事業主の支配管理下にあると認められる事業場構内(会社の門など)に到達した時点で終了するものであるが、本肢の場合のようにマイカー通勤者がライトの消し忘れなどに気づき、駐車場に引き返すことは一般にありうることであって、通勤とかけ離れた行為でなく、いったん事業場構内に入った後であっても、まだ時間の経過もほとんどないことなどから、通勤災害として取り扱う。




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step3 コメント

・労災保険法の通勤災害に関する通達からの問題でした。正解肢のDは、退勤途中、親しい同僚と経路上の喫茶店に寄ってコーヒーを飲みながら雑談し、40分程度過ごした後の災害であるため、この行為は「逸脱又は中断」に該当し、「日常生活上必要な行為」には該当しないため、通勤災害と認められないと判断できれば正解できた問題です。



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step4 プラスα(一読しておこう)

(1) 逸脱又は中断

・「逸脱」とは、通勤の途中において、就業又は通勤とは関係のない目的で合理的な経路をそれることをいう。
・「中断」とは、通勤の経路上において、通勤とは関係のない行為を行うことをいう。
・労働者が、通勤としての移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の移動は、通勤とされない。



(2) 逸脱・中断として取り扱われない場合

労働者が通常通勤の途中において行う、次のようなささいな行為を行う場合は、逸脱・中断として取り扱われない。したがって、当該ささいな行為を行う間も含め通勤とされる

① 経路の近くにある公衆便所を使用する場合
② 帰途に経路の近くにある公園で短時間休息する場合
③ 経路上の店でタバコ、雑誌等を購入する場合
④ 駅構内でジュースの立ち飲みをする場合
⑤ 経路上の店で渇きをいやすため、ごく短時間、お茶、ビール等を飲む場合  等



(3) 逸脱又は中断の例外

逸脱又は中断であっても、次に掲げる日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合には、当該逸脱又は中断の間を除き、通常の経路に復した後は通勤と認められる。

<日常生活上必要な行為と認められるもの>
① 日用品の購入その他これに準ずる行為
② 職業訓練、学校教育法に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
③ 選挙権の行使その他これに準ずる行為
④ 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為
⑤ 要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る)



今回は練習問題はお休みです。



明日もがんばりましょう。

☞ 次の【ランチタイム・スタディ 21 】をご覧になりたい方はこちら




この記事へのコメント

1. Posted by ふぃりっぷ・うぇざぁ   2016年10月31日 13:50
AとDで迷った挙げ句、Aを選んでしまいました。
理美容であればそこそこ時間を要すると思うのですが、こちらはOKであるのが、いまだに腑に落ちません。別に仕事帰りじゃなくても休日に行けばいいじゃないか、と思ったりもします。
2. Posted by MI   2016年11月01日 16:29
昨日は月末で、仕事オンリーでした。

すべて過去問で、テキストに載っていたり、模試で確認していましたので、「同僚の車」でピンと来て正解でした。

いつもこうだといいのですが、わからない問題に出会ってこそ、ありがとうという気持ちになります。
3. Posted by 管理人   2016年11月02日 10:20
ふぃりっぷ・うぇざぁさん、コメントありがとうございます。

このあたりは、細かい設定次第で判断が異なってしまいます。
おそらく問題文に設定を詳細に書けば書くほど、解答が明確になってしまうこともあるため、作問するのが、なかなか難しいところなのではないかと思われます。

4. Posted by 管理人   2016年11月02日 10:38
MIさん、コメントありがとうございます。

月末月始は、お忙しいことと思います。
そんなときにも、お時間を作ってご覧いただきありがとうございます。
これからもぜひ、ぜひ続けていってくださいね。
今後ともよろしくお願いします。

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