2016年10月14日

「ランチタイム・スタディ」の第9問です。

「ランチタイム・スタディ」の主旨については、9月29日の佐藤塾ブログの
「ランチタイム・スタディ」開始のお知らせをご覧ください。

さて、9問目には、択一式労災保険法が登場です。

正答率84%の問題です。



<問題(択一式労災問6)>


〔問〕遺族補償給付に関する次の記述のうち、誤っているものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。

ア 傷病補償年金の受給者が当該傷病が原因で死亡した場合には、その死亡の当時その収入によって生計を維持していた妻は、遺族補償年金を受けることができる。

イ 労働者が業務災害により死亡した場合、当該労働者と同程度の収入があり、生活費を分担して通常の生活を維持していた妻は、一般に「労働者の死亡当時その収入によって生計を維持していた」ものにあたらないので、遺族補償年金を受けることはできない。

ウ 遺族補償年金を受ける権利は、その権利を有する遺族が、自分の伯父の養子となったときは、消滅する。

エ 遺族補償年金の受給権を失権したものは、遺族補償一時金の受給権者になることはない。

オ 労働者が業務災害により死亡した場合、その兄弟姉妹は、当該労働者の死亡の当時、その収入により生計を維持していなかった場合でも、遺族補償一時金の受給者となることがある。

A (アとウ)  B (イとエ)  C (ウとオ)
D (アとエ)  E (イとオ)




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step1 正解は・・・



B (イとエ) 


  

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step2 解説

ア 〇 (法16条の2ほか)本肢のとおりである。傷病補償年金の受給者が「当該傷病が原因で死亡した」ということは、業務災害が原因で死亡したことになるため、遺族補償給付の支給対象となる。なお、傷病補償年金の受給者が私傷病により死亡した場合には、遺族補償給付は支給されない。

イ ☓ (法16条の2、昭41.1.31基発73号、平2.7.31基発486号)「労働者の収入によって生計を維持していた」とは、もっぱら又は主として労働者の収入によって生計を維持していたことを要せず、労働者の収入によって生計の一部を維持していれば足りる。したがって、設問の場合は、当該遺族と死亡労働者との間に「生計維持関係があった」ものとみなされる。

ウ 〇 (法16条の4第1項3号)遺族補償年金を受ける権利は、直系血族又は直系姻族以外の者の養子となったときは、消滅する。

エ ☓ (法16条の6第1項、法16条の7)遺族補償年金の受給権を失権したものであっても、所定の要件を満たした場合には、遺族補償一時金の受給権者となり得る。

オ 〇 (法16条の7第1項)本肢のとおりである。遺族補償一時金を受けることのできる遺族の範囲には、生計維持関係のなかった兄弟姉妹も含まれる。




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step3 コメント


・本問は、遺族補償給付からの出題でしたが、イは、解説にあるとおり、「生計を維持していたとは、労働者の収入によって何らかの生計の維持関係があることをいい、専ら、又は主として労働者の収入によって生計を維持していることを要せず、労働者の収入によって生計の一部を維持されていれば足りる」ため、いわゆる共稼ぎもこれに含まれます。

・エに関しては、遺族の身分は、労働者の死亡の当時の身分によりますので、遺族補償年金の受給権が失権した者であっても、遺族補償一時金の受給権者となることがあります。ただし、一度失権した者は、同一死亡労働者に関して、再び遺族補償年金の受給権者となることはないことも同時に押さえておきましょう。



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step4 プラスα(一読しておこう)

法16条の2(遺族補償年金)

① 遺族補償年金を受けることができる遺族は、労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹であって、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していたものとする。ただし、以外の者にあっては、労働者の死亡の当時次の各号に掲げる要件に該当した場合に限るものとする。
1.夫、父母又は祖父母については、60歳以上(※)であること。
2.子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること。
3.兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること又は60歳以上(※)であること。
4.前3号の要件に該当しない夫、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、厚生労働省令で定める障害の状態にあること。

② 労働者の死亡の当時胎児であった子が出生したときは、前項の規定の適用については、将来に向かって、その子は、労働者の死亡の当時その収入によって生計を維持していた子とみなす

③ 遺族補償年金を受けるべき遺族の順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹の順序とする。

(※)受給資格者のうち、夫、父母、祖父母及び兄弟姉妹については、当分の間、労働者の死亡の当時「55歳以上60歳未満」であった者についても、特例的に、受給資格者とされる(昭40法附則43条)。


16条の4(遺族補償年金の支給停止)

① 遺族補償年金を受ける権利は、その権利を有する遺族が次の各号の一に該当するに至ったときは、消滅する。この場合において、同順位者がなくて後順位があるときは、次順位者に遺族補償年金を支給する。
1.死亡したとき
2.婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む)をしたとき
3.直系血族又は直系姻族以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む)となったとき
4.離縁によって、死亡した労働者との親族関係が終了したとき
5.子、孫又は兄弟姉妹については、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき(労働者の死亡の時から引き続き第16条の2第1項第4号の厚生労働省令で定める障害の状態にあるときを除く)
6.第16条の2第1項第4号の厚生労働省令で定める障害の状態にある、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、その事情がなくなったとき(夫、父母又は祖父母については、労働者の死亡の当時60歳以上であったとき、子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるとき、兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか又は労働者の死亡の当時60歳以上であったときを除く)

② 遺族補償年金を受けることができる遺族が前項各号の一に該当するに至ったときは、その者は、遺族補償年金を受けることができる遺族でなくなる。




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step5 練習問題(チャレンジしてみよう!)


16条の4(遺族補償年金の支給停止)
① 遺族補償年金を受ける権利は、その権利を有する遺族が次の各号の一に該当するに至ったときは、消滅する。この場合において、同順位者がなくて A があるときは、次順位者に遺族補償年金を支給する。
1. B したとき
2.婚姻(届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある場合を含む)をしたとき
3. C 以外の者の養子(届出をしていないが、事実上養子縁組関係と同様の事情にある者を含む)となったとき
4. D によって、死亡した労働者との親族関係が終了したとき
5.子、孫又は兄弟姉妹については、18歳に達した日以後の最初の3月31日が終了したとき(労働者の死亡の時から引き続き第16条の2第1項第4号の厚生労働省令で定める障害の状態にあるときを除く)
6.第16条の2第1項第4号の厚生労働省令で定める障害の状態にある E 、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹については、その事情がなくなったとき( E 、父母又は祖父母については、労働者の死亡の当時60歳以上であったとき、子又は孫については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるとき、兄弟姉妹については、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか又は労働者の死亡の当時60歳以上であったときを除く)
② 遺族補償年金を受けることができる遺族が前項各号の一に該当するに至ったときは、その者は、遺族補償年金を受けることができる遺族でなくなる。




step6 選択肢はありません。答を紙に書いてみてください。
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step7 練習問題の解答



A : 後順位者
B : 死亡
C : 直系血族又は直系姻族
D : 離縁
E : 夫




来週もがんばりましょう。

・次回の【ランチタイム・スタディ10】をご覧になりたい方はこちら




この記事へのコメント

1. Posted by MI   2016年10月14日 15:10
あぶなかったです。エは即断できましたがイは消去法で選択しました・・・。

練習問題は、やはりキーワード重視で意識して読み込まないといけないことが、よくわかります。

日頃、なんとなくテキスト読んでしまいます。

いつも練習問題ありがとうございます。
2. Posted by 管理人   2016年10月15日 10:42
> 練習問題は、やはりキーワード重視で意識して読み込まないといけないことが、よくわかります。
わかっただけでも前進です。

> 日頃、なんとなくテキスト読んでしまいます。
そうなんですよね。
ただ単に条文を読んでいるだけだと、「重要な用語」を見落としてしまいがちです。
「練習問題をやってみることで、ハッとさせられて、意識して覚えていく。」 でいいと思います。
取り組んでみないとわからないことってありますよね。
3. Posted by センちゃん   2016年10月16日 15:29
単純な質問なのですが、

練習問題のAの正解は、「後順位者」となっていますが、これは条文でそうなっている、ということですよね?

意味としては、その後に出てくる単語ですが、「次順位者」でもいいわけですよね?

MIさんのご指摘と同じで、意味としては理解しているますが、「条文上の正確な単語や用語」をしっかり記憶していない、という事が露呈してしまいました。
4. Posted by 管理人   2016年10月16日 21:38
センちゃんさん、コメントありがとうございます。

> 練習問題のAの正解は、「後順位者」となっていますが、これは条文でそうなっている、ということですよね?

そうです。条文のとおりです。

> 意味としては、その後に出てくる単語ですが、「次順位者」でもいいわけですよね?

意味としては、「次順位者」でもいいです。

> MIさんのご指摘と同じで、意味としては理解しているますが、「条文上の正確な単語や用語」をしっかり記憶していない、という事が露呈してしまいました。

でも、ここは、気にしないでください。
実は、練習問題のAは、抜かれることは、まず、ありません。
というのも、ダミーが考えられないからです。

ダミーとしては、「先順位者」くらいしか考えられません。
ただ、「先順位者」は、意味を考えたら違うことがすぐにわかります。

「同順位者」をダミーにすると、「同順位者がなくて同順位者があるときは、」となって、意味不明です。
「次順位者」は、意味がとおってしまうため、ダミーとして機能しません。

ここは、「同順位者」「後順位者」「次順位者」と、用語が3種類あることを意識してほしかったために抜いたまでです。なので、気にしないでください。
(もっと他のところを抜いた方が適切だったように思います。すみません。(-_-;))

ただ、B~Eは、本試験で抜かれる可能性大ですので、注意しておいてください。

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