2024年02月13日
<問題(調査手法及びデータの種類)>
〔問〕 横断調査と縦断調査に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
A 職場の安全衛生に関する事業所調査を、1月に北海道、2月に東北地方、3月に関東地方でと日本を縦断し最後に九州・沖縄地方で同じ内容の調査を行えば、縦断調査といえる。
B パネル調査における「パネルの摩耗(又は脱落)」とは、第1回目の調査において無回答者が生じることをいう。
C 今年、東京都で標本抽出を行って労働実態調査を行い、来年再び同じ東京都で標本抽出を行って同じ内容の労働実態調査を行うならば、パネル調査といえる。
D 内閣を支持するか否かについて、5月と6月に横断調査を繰り返し、内閣支持率に変化がなければ、支持・不支持の態度が変化した人がいなかったことが分かる。
E 2変数の関連について、パネル調査であれば、因果関係を推論することができるが、横断調査ではできない。
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step1 正解は・・・
E
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step2 解説
A × 同じ内容の調査であっても、毎回異なる地域に限定して調査を実施する場合には、標本抽出が変わるため縦断調査にはならない。縦断調査とは、一定の調査対象者に対して一定の期間をおいて繰り返して行う調査手法である。
B × パネル調査における「パネルの摩耗」とは、第2回・第3回と回を重ねるごとに回答者数が減っていくことをいう。
C × 改めて行う標本抽出により抽出される調査対象者が変わってしまうためパネル調査には該当しない。パネル調査とは、同じ標本(パネラー)に対して同一の調査を時系列で実施する方法であり、固定した対象者に期間を隔てて一定期間内における行動・意識の変化を探り、その理由・過程を追求するものである。
D × 支持していた人が不支持になった数と不支持から支持になった数が同数であれば、全体の数値は変化しないため、支持・不支持の態度が変化した人がいなかったとはいえない。
E 〇 横断調査は「ある一時点での」調査であるため、2つの現象が同時に観測されたとして、関係があるのかどうかや、関係があるとしてもそのどちらが原因(先)でどちらが結果(後)なのかは確認できない。一方、パネル調査は縦断調査の種類の中のひとつであり、調査対象者に対して一定の期間をおいて繰り返して行う調査手法であるため、因果関係や前後関係を推論することができる。
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step3 コメント
・Eの「2変数の関連について、横断調査では因果関係を推論できない。」ということをかみ砕いてお伝えすると、例えば、公共交通機関を利用し通勤している人と、車で通勤している人の体重を調査したところ、公共交通機関を利用して通勤している人のほうが体重が軽い人が多いという調査結果が出たとします。
この場合、「公共交通機関を利用し通勤する人のほうがよく歩く(原因)ので、肥満になりにくい(結果)」と推論することは可能ですが、この横断調査だけではその因果関係を特定することはできません。
というのも、「体重が軽い人は体を動かしやすい(原因)ので、公共交通で通勤する人が多い(結果)」かもしれないからです。
また、そもそも通勤で歩くことと体重には因果関係がないかもしれません。
このように、横断調査では1時点のデータしか収集されず、どちらかの出来事が先行して発生したかを明確にできませんので、因果関係を特定するための方法としては適しません。
横断調査とは、ある1時点において調査したデータ結果を、年齢別、性別、学歴別などの基本属性別に分類し特性を分析するもので、厚生労働省の調査の多くは、この横断調査を採用しています。
・ここは、あまり深入りする必要はありませんが、前回のランチタイム・スタディでも取り上げたとおり、選択式で過去に「パネル」が抜かれていましたので、意味合いを知っておいて損はありません。
なお、ここに掲載した問題は、社会福祉士試験に過去に出題された問題を多少アレンジして掲載しています。
次回もがんばりましょう。
