2022年09月20日

「定年後の開業は可能ですか?」というご質問がありました。

[回答]

結論から申し上げますと「可能」です。
今までに社労士の仕事らしき仕事に携わってきていなくても大丈夫です。

ただ、コミュニケーション能力や観察力に長けていて、様々な業務、職場をこなしてきている人ほど有利だと思われます。
また、社労士の業務をこなしながらも、常に前向きに知識(たとえば判例、統計など)を身につけていくことや、情報(たとえば改正など)に精通していくことを追求していくことができる人であればあるほど、成功する可能性が高くなると思われます。

たとえば、次の記事には、可能な資格が掲載されています。
計16士業のうち定年後のシニアが取得しやすい資格とは|トップ5を徹底解説

このトップ5の中の2位に「社労士」が取り上げられています。

1位 行政書士
2位 社会保険労務士
3位 FP技能士
4位 司法書士
5位 税理士

ただ、たとえば、3位の「FP技能士」の場合には、定年後の開業も可能ではあるものの、仕事内容がおそらく富豪相手の「資産運用・相続関係」、又は一般顧客に対しては「執筆・講演」などになってきますので、定年前の職業が証券会社(又は銀行、場合によっては不動産)などの金融関係等に勤めているなどの一定の勤務経験・業務知識があることが前提となってきます。
(「保険の見直し」や「生活設計(提案書)」でもお金を稼ぐことができるもののたいした金額にはなりません。)

その点、社労士は、定年前に給与計算等の実務に携わっていなくても、今までの社会人経験がものをいう仕事です。
というのも、最近では、手続き業務は当然のこととして、提案できる社労士、経営者の悩みを解決できる社労士が求められているからです。

中小企業の経営者は常に孤独であり、人事労務絡みで何か問題が起きた場合には、相談できる相手がいません。
人事労務絡みの問題は、ナイーブな問題であり、プライバシーにもかかわるため、安易に従業員に相談する訳にはいきません。
税理士に相談しても「そこは税理士の業務を逸脱していますので相談にはのれません。」と下手に相談に応じて大変な事態になると責任問題となりますので断られます。
訴訟になれば弁護士が必要ですが、単なる相談では弁護士としてはお金にならないので、円満な解決の手助けにはならないことが多いのも事実です。

昨今、企業のコンプライアンス重視が叫ばれていますし、働き方改革の推進も相まって、人事労務に関するトラブルが多く、経営者の頭を悩ませています。
社労士の場合、給与計算をしていると、社員の勤怠がわかりますので、「Aさんは最近、休みがちですが大丈夫ですか?」などと経営者に声をかけることができます。
休みがちな社員は、不安や不満を抱えていることが多く、これらのことを早めに対処できると、事前にトラブルの芽を摘み取ることができます。

たとえば、「遅刻が多い社員に対してどう対処したらいいか。」などは、中小企業の場合、多くの経営者の共通の悩みでもあります。
1月に1回訪問して、些細な困り事の相談にのることが、単に給与計算をする社労士に比べ差別化でき、付加価値を付けることができます。

こうなると、経営者にとって、社労士は手放すことができません。
中小企業は、大企業と違って、少々の労務トラブルでも経営が傾きかねませんから、人事労務の相談事(3号業務)ができる「経営者のブレーン」となる頼れる社労士が求められています。

経営者の相談に乗るという点では、経営者の年齢に比較的近い社労士が好まれます。
そうなると、20代や30代の経営者よりも、もっと年齢が高い経営者が多いため、定年後の社会人経験が豊富な社労士の方が相談しやすいことになります。

「手続業務ができなくて大丈夫か?」と心配になるかもしれませんが、労基署、年金事務所、ハローワークとも、聞けば丁寧に回答してくれますので、この点は全くの初心者社労士でもなんとかなります。

定年前に前職で何をしていたかに関わらず(その道の専門的な業務に携わっていなくても)、開業が可能な一番の資格は「社労士」ではないかと考えています。

日本の企業数は約420万社ですが、中小企業が99%以上を占めます。
現時点でも、困り事や悩み事を抱える経営者は数多くいるに違いありません。
あなたというやる気に満ちた社労士を待ち望んでいる経営者がきっといます。
チャレンジしてみてください。


[関連] ☞ 「社労士の資格は役に立つか?



コメントする

名前
 
  絵文字