2021年11月27日

「ランチタイム・スタディ 2021本試験」の第58問です。

58問目は、択一式の労災保険法です。


正答率55%の問題です。


<問題( 択一式 労災 問1 )>

〔問〕 業務災害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 業務上左脛骨横骨折をした労働者が、直ちに入院して加療を受け退院した後に、医師の指示により通院加療を続けていたところ、通院の帰途雪の中ギプスなしで歩行中に道路上で転倒して、ゆ合不完全の状態であった左脛骨を同一の骨折線で再骨折した場合、業務災害と認められる。

B 業務上右大腿骨を骨折し入院手術を受け退院して通院加療を続けていた労働者が、会社施設の浴場に行く途中、弟の社宅に立ち寄り雑談した後に、浴場へ向かうため同社宅の玄関から土間に降りようとして転倒し、前回の骨折部のやや上部を骨折したが、既に手術後は右下肢の短縮と右膝関節の硬直を残していたため、通常の者より転倒しやすく、また骨が幾分細くなっていたため骨折しやすい状態だった場合、業務災害と認められる。

C 業務上右腓骨を不完全骨折し、病院で手当を受け、帰宅して用便のため松葉伺を使用して土間を隔てた便所へ行き、用便後便所から土間へ降りる際に松葉伺が滑って転倒し当初の骨折を完全骨折した場合、業務災害と認められる。

D 業務上脊髄を損傷し入院加療中の労働者が、医師の指示に基づき療養の一環としての手動式自転車に乗車する機能回復訓練中に、第三者の運転する軽四輪貨物自動車に自転車を引っかけられ転倒し負傷した場合、業務災害と認められる。

E 業務上右大腿骨を骨折し入院治療を続けて骨折部のゆ合がほぼ完全となりマッサージのみを受けていた労働者が、見舞いに来た友人のモーターバイクに乗って運転中に車体と共に転倒し、右大腿部を再度骨折した場合、業務災害と認められない。


-------------------------------------------------------------------------------------------------------
step1 正解は・・・



B
   


-------------------------------------------------------------------------------------------------------
step2 解説

(法7条1項1号、昭34.5.11基収2212号)設問のとおりである。なお、本件における医師の意見では、再骨折の骨折線は当初のそれと同一であること、当初の骨折はまだ治癒しておらず、ゆ合不完全の状態にあったこと、このような状態においてギプスもつけず長距離を歩行すれば一寸した拍子で再骨折しかねないことが認められている。

× (法7条1項1号、昭27.6.5基災収1241号)療養中の災害については、当初の業務上の傷病と、その療養中に業務外の災害によって加重し増悪した傷病、ないしは療養中における業務外の災害による死亡との間に相当因果関係があるかどうかによって、現在の死傷病の業務上外が決まる。本件は、右大腿骨を骨折しその後いったん治ゆしたが、転位ゆ合があって変形治ゆしたものであるため転医し入院手術を受け、退院後再び転医し通院加療を続けていた労働者が転倒し、前回の骨折部のやや上部を骨折した事案であるが、当初の骨折との間に因果関係が認められないとして、業務外とされた。

(法7条1項1号、昭34.10.13基収5040号)設問のとおりである。本件に係る再骨折は、当初の不完全骨折の療養の過程における必要な日常の動作によって、当初の骨折部を再骨折したものと認められるから、当初の骨折との間に因果関係の中断が無いものと認められる。

(法7条1項1号、昭42.1.24 基収7808号)設問のとおりである。本件は、入院療養中の労働者が、医師の指示に基づき療養の一環としての機能回復訓練中に発生したもので、当初の業務上の負傷との間に相当因果関係が認められるので、業務上の災害として取り扱うのは相当である。

(法7条1項1号、昭32.12.25 基収6636号)設問のとおりである。本件は、事業主の支配下にない労働者の私的行為に基づくものであるから、当初の骨折との間に因果関係が認められないため、業務外である。


※療養中の災害については、当初の業務上の傷病と、その療養中に業務外の災害によって加重し増悪した傷病、ないしは療養中における業務外の災害による死亡との間に相当因果関係があるかどうかによって、現在の死傷病の業務上外が決まる。この因果関係が認められる場合を掲げるならば次のとおりであり、この2つのいずれかにあてはまる場合には、現在の死傷病も業務上とされる。

a 「当初の業務上の傷病を生じなかったならば、業務外の災害も生じなかったであろうし、この災害が生じなかったならば現在の死傷病も生じなかったであろう」と認められ、かつ「当初の業務上の傷病を生じなかったならば、かかる災害が生じたとしても、現在の死傷病は生じなかったであろう」と認められる場合

b 当初の業務上の傷病が生じなかったとしても、業務外の災害は生じ得たであろうが、この災害が療養中に通常生じ得るもの又は避けられないものと認められ、かつ「当初の業務上の傷病が生じなかったならば、この業務外の災害が生じたとしても、現在の死傷病は生じなかったであろう」と認められる場合

しかしながら、療養中の災害が、事業場施設の利用によって生じたものである場合、たとえば、業務上負傷し会社の自動車に乗せられて病院へ行く途中で交通事故にあった場合などは、その交通事故による負傷又は死亡も業務起因性がある。





-------------------------------------------------------------------------------------------------------
step3 コメント

・択一式の労災保険法の問1は、業務災害に関する問題です。この問題は難問と言ってもいい部類の問題で、正答率が5割を上回っているものの、正解した方も自信を持って解答した人は少なかったと思われます。



明日もがんばりましょう。




コメントする

名前
 
  絵文字