2021年11月19日
50問目は、択一式の労働基準法です。
正答率60%の問題です。
<問題( 択一式 労基 問3 )>
〔問〕 労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア 使用者は、退職手当の支払については、現金の保管、持ち運び等に伴う危険を回避するため、労働者の同意を得なくても、当該労働者の預金又は貯金への振込みによることができるほか、銀行その他の金融機関が支払保証をした小切手を当該労働者に交付することによることができる。
イ 賃金を通貨以外のもので支払うことができる旨の労働協約の定めがある場合には、当該労働協約の適用を受けない労働者を含め当該事業場のすべての労働者について、賃金を通貨以外のもので支払うことができる。
ウ 使用者が労働者に対して有する債権をもって労働者の賃金債権と相殺することに、労働者がその自由な意思に基づき同意した場合においては、「右同意が労働者の自由な意思に基づいてされたものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、右同意を得てした相殺は右規定〔労働基準法第24条第1項のいわゆる賃金全額払の原則〕に違反するものとはいえないものと解するのが相当である」が、「右同意が労働者の自由な意思に基づくものであるとの認定判断は、厳格かつ慎重に行われなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。
エ 労働基準法第24条第1項の禁止するところではないと解するのが相当と解される「許さるべき相殺は、過払のあつた時期と賃金の清算調整の実を失わない程度に合理的に接着した時期においてされ、また、あらかじめ労働者にそのことが予告されるとか、その額が多額にわたらないとか、要は労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合でなければならない」とするのが、最高裁判所の判例である。
オ 労働基準法第25条により労働者が非常時払を請求しうる事由には、「労働者の収入によつて生計を維持する者」の出産、疾病、災害も含まれるが、「労働者の収入によつて生計を維持する者」とは、労働者が扶養の義務を負っている親族のみに限らず、労働者の収入で生計を営む者であれば、親族でなく同居人であっても差し支えない。
A 一つ B 二つ C 三つ D 四つ E 五つ
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step1 正解は・・・
C
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step2 解説
ア × (法24条1項、則7条の2)「労働者の同意を得なくても」としている点が誤り。「労働者の同意を得て」、労働者の預金又は貯金への振込み等による支払が可能となる。
イ × (法24条1項、昭63.3.14基発150号)労働協約の定めによって通貨以外のもので賃金を支払うことが許されるのは、その労働協約の適用を受ける労働者に限られる。
ウ 〇 (法24条1項、平2.11.26最高裁第二小法廷判決日新製鋼事件)本肢のとおりである。
エ 〇 (法24条1項、昭44.12.18最高裁第一小法廷判決福島県教組事件)本肢のとおりである。適正な賃金の額を支払うための手段たる相殺は、法24条1項ただし書によって除外される場合(全額払いの原則の例外)に当たらなくても、その行使の時期、方法、金額等からみて労働者の経済生活の安定との関係上不当と認められないものであれば全額払の原則に違反するものではない。
オ 〇 (法25条、コンメンタール)本肢のとおりである。なお、親族であっても独立の生計を営む者は含まれない。
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step3 コメント
・択一式の労働基準法の問3は、賃金等に関する個数問題でした。ウ及びエは最高裁判例からの出題ですが、過去に何度も出題されている判例で、過去問をしっかり学習できていた人には容易にわかる肢でしたし、その他の選択肢の正誤判断も比較的容易に正誤判断できる問題でした。ここは個数問題といえども得点したいところです。
明日もがんばりましょう。