2020年12月31日

「ランチタイム・スタディ」の第92問です。

92問目は、選択式の労働基準法です。
(本問は、本来は、12月19日に掲載すべき問題でした。アップができていなかったため、最終日である本日、最終問前にお届けします。)

正答率86&30%の問題で、難問です。

※選択式労基B=86%、C=30%(Bは正答率がCより高いものの同じカテゴリーですので、Cの正答率に合わせここで掲載しています。)


<問題( 選択式 労基BC )>

最高裁判所は、自己の所有するトラックを持ち込んで特定の会社の製品の運送業務に従事していた運転手が、労働基準法上の労働者に当たるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。

「上告人は、業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、F紙業は、運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先及び納入時刻の指示をしていた以外には、上告人の業務の遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとはいえず、 B の程度も、一般の従業員と比較してはるかに緩やかであり、上告人がF紙業の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りないものといわざるを得ない。そして、 C 等についてみても、上告人が労働基準法上の労働者に該当すると解するのを相当とする事情はない。そうであれば、上告人は、専属的にF紙業の製品の運送業務に携わっており、同社の運送係の指示を拒否する自由はなかったこと、毎日の始業時刻及び終業時刻は、右運送係の指示内容のいかんによって事実上決定されることになること、右運賃表に定められた運賃は、トラック協会が定める運賃表による運送料よりも1割5分低い額とされていたことなど原審が適法に確定したその余の事実関係を考慮しても、上告人は、労働基準法上の労働者ということはできず、労働者災害補償保険法上の労働者にも該当しないものというべきである。」



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step1 次の選択肢の中から答を選んでください。

B及びCの選択肢
⑨ 業務遂行条件の変更
⑩ 業務量、時間外労働  
⑮ 公租公課の負担、F紙業が必要経費を負担していた事実 
⑯ 時間的、場所的な拘束
⑰ 事業組織への組入れ、F紙業が必要経費を負担していた事実
⑱ 事業組織への組入れ、報酬の支払方法  
⑲ 制裁、懲戒処分
⑳ 報酬の支払方法、公租公課の負担


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step2 正解は・・・



B → ⑯ 時間的、場所的な拘束 (平8.11.28最高裁第一小法廷判決横浜南労基署長(旭紙業)事件)

C → ⑳ 報酬の支払方法、公租公課の負担 (平8.11.28最高裁第一小法廷判決横浜南労基署長(旭紙業)事件)



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step3 コメント


・選択式の労働基準法のB及びCは、最高裁判例横浜南労基署長(旭紙業)事件からの出題でした。Bの正答率は高かったものの、Cは難問であり、判旨の内容を理解していないと正解することは難しい問題でした。⑰、⑱にある「事業組織への組入れ」は、「労働組合法上の労働者」とされるか否かの判断基準であり、「労働基準法上の労働者」であるか否かの判断基準との比較は困難であったと思われます。ただ、一度、出題されましたので、「労働基準法上の労働者の判断基準」と、「労働組合法上の労働者の判断基準」の整理はしておくべき内容といえます。

・本問は、Cの難易度が高く、安衛法のEも難易度が極めて高い問題でした。そのため、労基・安衛の選択式が2点の人は全体の約3割いたのですが、0点の人が約2%、1点の人が約11%であったため、2点救済は行われませんでした。択一式の総得点では高得点であった方でも、労基・安衛の選択式が2点で涙をのんだ方はかなり多くいるように見受けられます。労基法の選択式では、今後も引き続き、判例が出題される可能性が高いと思われます。数年前までは、労基法の知識があれば判例自体を知らなくても正解できる問題が散見されましたが、今後は、判旨の内容を知らないと確実に正解するのは難しい問題が出題される傾向が高くなると考えた方が無難です。実務的にも意味合いが大きい判例もここ数年多く、過去の判例でも学術的に学者が興味を引く内容のものはありますので、同じ轍を踏まないためにも、今まで以上に判例対策を施しておく必要があるように思われます。



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