2020年12月31日
94問目は、択一式の労働基準法です。
正答率9%の問題で、難問です。
※難問とは、合格者でも正答率が50%を割ってしまっている問題を指します。
※令和2年度社労士本試験(選択式・択一式)の中で、最も正答率が低かった問題です。
<問題( 択一式 労一 問4 )>
〔問〕 労働組合法等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
A 労働組合が、使用者から最小限の広さの事務所の供与を受けていても、労働組合法上の労働組合の要件に該当するとともに、使用者の支配介入として禁止される行為には該当しない。
B 「労働組合の規約により組合員の納付すべき組合費が月を単位として月額で定められている場合には、組合員が月の途中で組合から脱退したときは、特別の規定又は慣行等のない限り、その月の組合費の納付につき、脱退した日までの分を日割計算によつて納付すれば足りると解すべきである。」とするのが、最高裁判所の判例である。
C 労働組合の規約には、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ、同盟罷業を開始しないこととする規定を含まなければならない。
D 「ユニオン・ショップ協定によって、労働者に対し、解雇の威嚇の下に特定の労働組合への加入を強制することは、それが労働者の組合選択の自由及び他の労働組合の団結権を侵害する場合には許されないものというべきである」から、「ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者及び締結組合から脱退し又は除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は、右の観点からして、民法90条の規定により、これを無効と解すべきである(憲法28条参照)。」とするのが、最高裁判所の判例である。
E いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)は、個々の具体的な労働争議における労使間の交渉態度、経過、組合側の争議行為の態様、それによって使用者側の受ける打撃の程度等に関する具体的諸事情に照らし、衡平の見地からみて労働者側の争議行為に対する対抗防衛手段として相当と認められる場合には、使用者の正当な争議行為として是認され、使用者は、いわゆるロックアウト(作業所閉鎖)が正当な争議行為として是認される場合には、その期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務を免れるとするのが、最高裁判所の判例である。
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step1 正解は・・・
B
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step2 解説
A 〇 (労働組合法2条、同法7条) 本肢のとおりである。労働組合法は、労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払について経理上の援助を与えることを不当労働行為として、使用者に対しその行為を行うことを禁止しているが、本肢の場合は、経理上の援助に該当しない。
B × (労働組合法2条、昭50.11.28最高裁第三小法廷組合費請求事件) 「労働組合の規約により組合員の納付すべき組合費が月を単位として月額で定められている場合には、組合員が月の途中で組合から脱退したときでも、特別の規定又は慣行等のない限り、「その月の組合費の全額を納付する義務を免れないものというべきであり、脱退した日までの分を日割計算によって納付すれば足りると解することはできない。」とするのが、最高裁判所の判例である。
C 〇 (労働組合法5条2項) 本肢のとおりである。
D 〇 (平元.12.14最高裁第一小法廷三井倉庫港運事件) 本肢のとおりである。ユニオンショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入しているもの、及び締結組合から脱退しまたは除名されたが、他の労働組合に加入し又は新たな労働組合を結成した者について使用者の解雇義務を定める部分は公序に反し無効であるとした。
E 〇 (昭50.4.25最高裁第三小法廷丸島水門事件) 本肢のとおりである。使用者の争議行為(ロックアウト)の正当性については、「労働者の争議行為により使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合には、衡平の原則に照らし、使用者側においてこのような圧力を阻止し、労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段として相当性を認められるかぎりにおいては、使用者の争議行為も正当なものとして是認される」と解すべきである。なお、使用者の争議行為としてのロックアウトに相当性が認められる場合には、使用者はロックアウト期間中の賃金支払義務を免れる。
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step3 コメント
・択一式の労働一般常識の問4は、最高裁判例を含めた労働組合法等に関する問題でした。正解肢であるBの組合費の日割計算をするか否かの判例は難易度が高く、本試験の限られた時間の中で判断するには難しかったと思われます。
これでランチタイム・スタディ2020本試験は終了です。
今年もお世話になりました。
良いお年をお迎えください。