2019年02月24日

「平成30年版労働経済白書」読み解き6を始めます。

「平成30年版労働経済白書」読み解きの主旨については、1月20日の佐藤塾ブログの『
『「平成30年版労働経済白書」読み解き』 開始のお知らせ』をご覧ください。

6.我が国の能力開発をめぐる状況

●我が国では、男性と比較し、女性のOJTの実施率が低く、OECD平均を大きく下回っている
男女別にOJTの実施率をみると、OECD諸国の平均は、男性55.1%、女性57.0%であるが、我が国のOJTの実施率男性50.7%、女性45.5%となっており、男女ともにOJTの実施率が低く、特に女性においてOECD平均との乖離幅が大きい。OJTの実施率が高い国々では、男性のOJTの実施率よりも、女性のOJTの実施率の方が高水準となっている特徴があるが、我が国では、女性のOJTの実施率よりも、男性のOJTの実施率の方が高水準となっている。

●我が国では、ある業務を遂行するに当たって、労働者の能力不足に直面している企業の割合が高い。
労働者の能力不足に直面している企業の割合は、OECD諸国の中で我が国が81%と最も高い水準となっている。G7の状況をみると、ドイツ・米国40%、イタリア34%、カナダ31%、フランス21%、英国12%となっており、我が国が突出して高いことが分かる。したがって、国際比較をすると、我が国では、労働者の能力不足に直面している企業が多いにもかかわらず、OJTの実施率が低調となっているといえる。

●我が国はスキルや学歴のミスマッチがOECD諸国の中で最も高い水準となっている
スキルや学歴のミスマッチについてみると、OECD諸国の中で我が国が68.2と最も高い水準となっている。G7の状況をみると、フランス64.6%、イタリア・英国64.4%、米国59.0%、カナダ53.1%、ドイツ46.7%となっており、我が国が突出して高い状況ではないが、ドイツと比較すると21.5%ポイント高くなっている。
具体的に生じているミスマッチの内容をみると、職務内容が学問の専攻分野と関連していない者、就業者の学歴と現在の仕事に必要とされる学歴にミスマッチが生じている者又はその両方が生じている者62.4%と多くを占めている。

●我が国のGDPに占める企業の能力開発費の割合は、欧米諸国と比較し、突出して低い水準にあり、経年的にも低下している
2010~2014年のGDPに占める企業の能力開発費の割合の水準について各国の状況を比較すると、米国2.08%、フランス1.78%、ドイツ1.20%、イタリア1.09%、英国1.06%、日本0.10%となっており、日本が突出して低い水準にあることが分かる。
当該割合の経年的な変化について比較すると、米国では、1995~1999年と比較し割合が上昇しており、2000年代に入ってからは2%以上を維持している。フランスやイタリアにおいても、割合が上昇している。他方、ドイツ、英国、日本では、1995~1999年より割合が低下し続けており、1995~1999年と2010~2014年を比較すると、ドイツ0.14%ポイント、英国1.17%ポイント、日本0.31%ポイント低下している。
ここでの能力開発費については、企業内外の研修費用などを示すOFF-JTが推計されたものであり、OJTを含まないことに留意が必要であるが、GDPに占める企業の能力開発費の割合が、国際的にみて突出して低い水準にとどまっており、経年的にも低下が続いていることを踏まえると、我が国の労働者の人的資本が十分に蓄積されず、ひいては長期的にみて労働生産性の向上を阻害する要因となる懸念がある

●人手不足等の影響もあり、我が国の一社当たりの能力開発費は2015年以降増加に転じている
一社当たりの能力開発費の推移をみると、2010年から2014年にかけて低下が続いていたが、2014年を底に反転し、2015年以降増加している。一社当たりの能力開発費が増加に転じた要因の1つとして考えられる人手不足感と能力開発との関係をみると、人手不足対策として能力開発を重視する企業では、重視しない企業などと比較し、「5年前(2013年)と比較し、人材育成を強化した」と回答する企業の割合が高い。

●「製造業」「情報通信業」「卸売業」では、大企業の能力開発費が高いことなどにより、企業規模間の格差が生じているが、「小売業」「宿泊・飲食サービス業」では、大企業の能力開発費が低く、中小企業の方が高いことなどにより、同格差が生じている
大企業(従業者1,000人以上企業)と中小企業(従業者50~299人以下企業)の従業者一人当たりの能力開発費の水準の2016年の状況を概観すると、「全産業」では、大企業に対して中小企業は75.0%程度となっている。各産業別に2016年の同値をみると、「製造業」が59.6%、「情報通信業」が58.6%、「卸売業」が70.2%となっており、特に「製造業」「情報通信業」では格差が大きいことが分かる。一方で、「小売業」「宿泊・飲食サービス業」では、中小企業の従業者一人当たりの能力開発費の方が高い水準にあり、中小企業に対して大企業は、「小売業」が56.1%、「宿泊・飲食サービス業」が74.1%となっている。



お疲れ様でした。
かなり文章を絞りましたが、能力開発に関しては、この文面からも読み取れる通り、日本の課題でもありますので重要な位置づけにあります。
細かい数値は覚える必要はありませんので、タイトルを中心に押さえておきましょう。
次回は、この部分の練習問題です。



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