2019年02月23日

「平成30年版労働経済白書」読み解き5「「我が国の労働生産性」の練習問題です。

「平成30年版労働経済白書」読み解きの主旨については、1月20日の佐藤塾ブログの『
『「平成30年版労働経済白書」読み解き』 開始のお知らせ』をご覧ください。


〔問〕 我が国の労働生産性に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、本問においては「平成30年版労働経済白書」を参照している。

A 我が国の労働生産性の水準は、G7の中で最も低い水準となっている。

B 我が国の労働生産性の企業規模間格差は、国際的にみて大きい。

C 「製造業」「情報通信業」では、大企業の労働生産性が高いことなどにより、企業規模間の格差が生じているが、「小売業」「宿泊・飲食サービス業」では、大企業の労働生産性が低く、中小企業の方が高いことなどにより、同格差が生じている。

D 労働生産性の企業規模間の格差は縮小している。

E 「小売業」「宿泊・飲食サービス業」では、大企業と比較し、中小企業における労働生産性のバラつきが大きい。




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step1 正解は・・・



D



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step2 解説

A 〇 (平成30年版労働経済白書) 本肢のとおりである。労働生産性の「水準」について、2012年から2016年にかけての5年間の平均値をみると、我が国は名目労働生産性、実質労働生産性ともに、G7の中で最も低い水準にある。実質労働生産性をみると、フランス、ドイツ、米国がおおむね同水準となっており、労働投入量当たり60ドル台とG7の中で高水準となっている。次いで、イタリアの同値が50ドル台、カナダと英国の同値が40ドル台後半となっている。一方で、我が国の実質労働生産性は、労働投入量当たり40ドル台前半となっており、フランス、ドイツ、米国の水準に対して、おおむね0.7倍となっている。

B 〇 (平成30年版労働経済白書) 本肢のとおりである。雇用者数が250人以上の企業における労働生産性の水準を100とした際、雇用者数が20~49人の企業の同値がどのくらいなのかについて、OECD諸国のデータをまとたものによると、相対的に規模の大きな企業の労働生産性の水準が高いことは、OECD諸国で共通であり、相対的に規模の小さな企業の労働生産性の水準は、OECD平均でみると55%となっている。フィンランド、フランス、イタリアでは、70%程度とOECD平均を上回り、大きな格差が生じていない一方で、英国や米国では50%程度、我が国では45%と企業規模による格差が大きい状況にある。

C 〇 (平成30年版労働経済白書) 本肢のとおりである。「製造業」「情報通信業」「卸売業」「小売業」「宿泊・飲食サービス業」の各産業において、大企業(従業員1,000人以上の企業)と中小企業(従業員50~299人以下の企業)の2016年の労働生産性の水準を概観すると、「全産業」では、大企業に対する中小企業は72.2%となっている。
各産業別に2016年の同値をみると、「製造業」が61.0%、「情報通信業」が83.4%、「卸売業」が89.2%となっており、特に「製造業」において格差が大きいことが分かる。一方で、「小売業」「宿泊・飲食サービス業」では、中小企業の労働生産性の方が高い水準にあり、中小企業に対する大企業は、「小売業」が94.5%、「宿泊・飲食サービス業」が81.2%となっている。

D ☓ (平成30年版労働経済白書) 労働生産性の企業規模間の格差は「拡大」している。2012年と2016年を比較し、こうした企業規模間の格差がどのように変化しているのか、確認してみると、「全産業」では、2012年において大企業に対する中小企業が77.1%であり、2016年の同値が72.2%であることを踏まえると、企業規模間の格差は拡大している。各産業別に2012年の同値をみると、「製造業」が72.0%、「情報通信業」が79.2%、「卸売業」が92.1%であり、2016年の同値が「製造業」が61.0%、「情報通信業」が83.4%、「卸売業」が89.2%であることを踏まえると、2016年において「製造業」「卸売業」では、格差が拡大していることが分かる。他方、「小売業」「宿泊・飲食サービス業」では、2016年と同様に、2012年においても中小企業の労働生産性の方が高い水準にあり、中小企業に対する大企業は、「小売業」が95.6%、「宿泊・飲食サービス業」が81.4%となり、格差はおおむね変わらない状況にある。

E 〇 (平成30年版労働経済白書) 本肢のとおりである。「小売業」「宿泊・飲食サービス業」では、大企業と比較し、中小企業における労働生産性のバラつきが大きくなっており、労働生産性が低い企業の「底上げ」により労働生産性を向上させる余地があるものと考えられる。



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step3 コメント

・平成30年版労働経済白書から、我が国の労働生産性に関する問題です。労働生産性に関しては、過去にも本試験に出題されていますので要注意です。ただ、深入りせずに大きな傾向だけを捉えておきましょう。



次回もがんばりましょう。




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