2017年12月22日

「ランチタイム・スタディ」の第57問です。

「ランチタイム・スタディ」の主旨については、10月1日の佐藤塾ブログの『「ランチタイム・スタディ2017」開始のお知らせ(ブログの記事のご案内)』をご覧ください。



さて、57問目は、択一式の労働者災害補償保険法です。

正答率60%&合否を分けた問題です。

※「合否を分けた問題」とは、「合格者だけの正答率」と「全体の正答率(ただし、全体正答率65%未満)」とで、15%以上差が開いた問題です。
※正答率がちょうど6割になりました。



<問題( 択一式 労災 問6)>

〔問〕 労災保険給付と損害賠償の関係に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

A 政府が被災労働者に対し労災保険法に基づく保険給付をしたときは、当該労働者の使用者に対する損害賠償請求権は、その保険給付と同一の事由については損害の填補がされたものとしてその給付の価額の限度において減縮するが、同一の事由の関係にあることを肯定できるのは、財産的損害のうちの消極損害(いわゆる逸失利益)のみであり、保険給付が消極損害の額を上回るとしても、当該超過分を、財産的損害のうちの積極損害(入院雑費、付添看護費を含む。)及び精神的損害(慰謝料)を填補するものとして、これらとの関係で控除することは許されないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

B 労働者が使用者の不法行為によって死亡し、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受けることが確定したときは、損害賠償額を算定するにあたり、当該遺族補償年金の填補の対象となる損害は、特段の事情のない限り、不法行為の時に填補されたものと法的に評価して、損益相殺的な調整をすることが相当であるとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

C 労災保険法に基づく保険給付の原因となった事故が第三者の行為により惹起され、第三者が当該行為によって生じた損害につき賠償責任を負う場合において、当該事故により被害を受けた労働者に過失があるため損害賠償額を定めるにつきこれを一定の割合で斟酌すべきときは、保険給付の原因となった事由と同一の事由による損害の賠償額を算定するには、当該損害の額から過失割合による減額をし、その残額から当該保険給付の価額を控除する方法によるのが相当であるとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

D 政府が被災労働者に支給する特別支給金は、社会復帰促進等事業の一環として、被災労働者の療養生活の援護等によりその福祉の増進を図るために行われるものであり、被災労働者の損害を填補する性質を有するということはできず、したがって、被災労働者の受領した特別支給金を、使用者又は第三者が被災労働者に対し損害賠償すべき損害額から控除することはできないとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。

E 労災保険法に基づく保険給付の原因となった事故が第三者の行為により惹起された場合において、被災労働者が、示談により当該第三者の負担する損害賠償債務を免除した場合でも、政府がその後労災保険給付を行えば当該第三者に対し損害賠償を請求することができるとするのが、最高裁判所の判例の趣旨である。



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step1 正解は・・・


E


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step2 解説

A 〇 (昭62.7.10最高裁第二小法廷青木鉛鉄事件) 本肢のとおりである。政府が被害者に対し保険給付をしたときは、被害者が使用者に対して取得した損害賠償請求権は、保険給付と同一の事由については、損害が填補されたものとして、その給付の価額の限度において減額するものと解されるが、同一の事由の関係にあるとみられるのは民事上の財産的損害のうちの消極的損害(いわゆる逸失利益)のみであり、積極損害及び精神的損害はこれに当たらない。

B 〇 (平27.3.4最高裁大法廷フォーカスシステムズ事件) 本肢のとおりである。被害者が不法行為によって死亡した場合において、その損害賠償請求権を取得した相続人が遺族補償年金の支給を受けることが確定したときは、制度の予定するところと異なってその支給が著しく遅滞するなどの特段の事情のない限り、その遺族補償年金の填補の対象となる損害は不法行為の時に填補されたものと法的に評価して損益相殺的な調整をすることが公平の見地からみて相当である。

C 〇 (平1.4.11最高裁第三小法廷高田建設事件) 本肢のとおりである。本件は、民事損害賠償額を算定するに当たって、被災労働者の過失分の減額(過失相殺)について、労災保険給付を控除する前に行うべきなのか、控除した後に行うべきなのかが争点となった事案であるが、最高裁判所の判例によると、「第三者行為災害の場合において被災労働者に過失があるときの労災保険給付の原因となった事由と同一の事由による損害賠償額の算定は、損害額から過失割合による減額をし、その残額から保険給付の価額を控除する方法によるのが相当である(控除前相殺説)」とされた。

D 〇 (平8.2.23最高裁第二小法廷コック食品事件) 本肢のとおりである。社会復帰促進等事業の一環として支給される特別支給金は、被災労働者の福祉の増進を図るためのもので、損害賠償義務の履行との関係についての調整規定も置かれていないことに照らすと、被災労働者の損害を填補する性質を有するものとはいえず、これを損害賠償の額から控除することはできない。

E ☓ (昭38.6.4最高裁第三小法廷小野運送事件) 補償を受けるべき者が、第三者から損害賠償を受け又は第三者の負担する損害賠償債務を免除したときは、その限度において損害賠償請求権は消滅するのであるから、政府がその後保険給付をしても、当該第三者に対し損害賠償を請求することはできない。



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step3 コメント

・択一式の労働者災害補償保険法の問6は、労災保険給付と損害賠償の関係に関する最高裁判例からの出題でした。それぞれの問題が長文であり、その意味するところを整理しくみ取るのに時間を要します。労基や労一での判例問題は今までも多く出題されていましたが、択一式において労災における判例の出題は予期せぬ問題だったと思います。焦らず落ち着いて対応したいところです。



来週もがんばりましょう。




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