2021年11月
2021年11月26日
57問目は、択一式の国民年金法です。
正答率55%の問題です。
<問題( 択一式 国年 問10 )>
〔問〕 年金たる給付に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
A 41歳から60歳までの19年間、第1号厚生年金被保険者としての被保険者期間を有している70歳の妻(昭和26年3月2日生まれ)は、老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給中である。妻には、22歳から65歳まで第1号厚生年金被保険者としての被保険者期間を有している夫(昭和31年4月2日生まれ)がいる。当該夫が65歳になり、老齢厚生年金の受給権が発生した時点において、妻の年間収入が850万円未満であり、かつ、夫と生計を同じくしていた場合は、当該妻に振替加算が行われる。
B 併給の調整に関し、国民年金法第20条第1項の規定により支給を停止されている年金給付の同条第2項による支給停止の解除の申請は、いつでも、将来に向かって撤回することができ、また、支給停止の解除の申請の回数について、制限は設けられていない。
C 22歳から30歳まで第2号被保険者、30歳から60歳まで第3号被保険者であった女性(昭和33年4月2日生まれ)は、59歳の時に初診日がある傷病により、障害等級3級に該当する程度の障害の状態となった。この者が、当該障害の状態のまま、61歳から障害者の特例が適用され定額部分と報酬比例部分の特別支給の老齢厚生年金を受給していたが、その後当該障害の状態が悪化し、障害等級2級に該当する程度の障害の状態になったため、63歳の時に国民年金法第30条の2第1項(いわゆる事後重症)の規定による請求を行ったとしても障害基礎年金の受給権は発生しない。
D 障害基礎年金の受給権者が、厚生年金保険法第47条第2項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態に該当しなくなった日から起算して同項に規定する障害等級に該当する程度の障害の状態に該当することなく3年を経過した日において、65歳に達していないときでも、当該障害基礎年金の受給権は消滅する。
E 第1号被保険者である夫の甲は、前妻との間の実子の乙、再婚した妻の丙、丙の連れ子の丁と4人で暮らしていたところ甲が死亡した。丙が、子のある妻として遺族基礎年金を受給していたが、その後、丙も死亡した。丙が受け取るはずであった当該遺族基礎年金が未支給年金となっている場合、丁は当該未支給年金を受給することができるが、乙は当該未支給年金を受給することができない。なお、丁は甲と養子縁組をしておらず、乙は丙と養子縁組をしていないものとする。
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step1 正解は・・・
B
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step2 解説
A × (昭60法附則14条1項)老齢基礎年金の受給権者が、老齢厚生年金(被保険者期間の月数が240以上であるものに限る)を受けることができるときは、振替加算は行われない。本肢の場合、昭和26年3月2日生まれの妻は、35歳以後の第1号厚生年金被保険者期間が19年あれば、中高齢者の期間短縮特例により20年(240月)とみなされるため、振替加算は行われないことになる。
B 〇 (法20条4項)本肢のとおりである。支給停止の解除(選択替え)の回数について、制限は設けられていない。
C × (法30条の2)特別支給の老齢厚生年金を受給している者であっても、65歳に達する日の前日までの間であれば事後重症による障害基礎年金の支給を請求することができるため、本肢は誤りとなる。なお、繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権者に対しては、事後重症による障害基礎年金は支給されない。
D × (法35条)障害基礎年金の受給権は、受給権者の障害の程度が軽減し、厚生年金保険法の規定による障害等級3級にも該当しなくなった場合であって、そのまま障害等級3級にも該当することなく65歳に達したとき又は3年を経過したときの「いずれか遅い方」が到達したときに消滅する。したがって、本肢の場合には障害基礎年金の受給権は消滅しない。
E × (法19条2項)本肢の場合、先妻の子の特例により未支給年金を受給することができるのは乙であり、丁は未支給年金を受給することはできない。
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step3 コメント
・択一式の国民年金法の問10は、一部、事例問題を含む年金たる給付に関する問題でした。正解肢であるBの支給停止の解除(選択替え)の回数制限は、聞いたことがないはずですので、他の選択肢に惑わされなければ正解できる問題です。
明日もがんばりましょう。
2021年11月25日
56問目は、択一式の社会保険一般常識です。
正答率56%の問題です。
<問題( 択一式 社一 問5 )>
〔問〕 社会保険労務士法令に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
A 一般の会社の労働社会保険事務担当者又は開業社会保険労務士事務所の職員のように、他人に使用され、その指揮命令のもとに事務を行う場合は、社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者の業務の制限について定めた社会保険労務士法第27条にいう「業として」行うに該当する。
B 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述及び尋問をすることができる。
C 厚生労働大臣は、開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の業務の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、当該開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人に対し、その業務に関し必要な報告を求めることができるが、ここにいう「その業務に関し必要な報告」とは、法令上義務づけられているものに限られ、事務所の経営状態等についての報告は含まれない。
D 社会保険労務士法人の事務所には、その事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている社会保険労務士会の会員である社員を常駐させなければならない。
E 社会保険労務士法人の解散及び清算を監督する裁判所は、当該監督に必要な検査をするに先立ち、必ず厚生労働大臣に対し、意見を求めなければならない。
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step1 正解は・・・
D
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step2 解説
A × (社会保険労務士法27条、昭43.12.9庁保発23号)「業として」とは、一般には、一定の行為の反覆的継続的遂行が、社会通念上事業の遂行とみられるような場合をいうが、ここでは、報酬を得て法2条の事務を業とする者をいい、独立して自らの責任において法2条の事務を反覆的継続的に遂行する者をいうこと。したがつて、他人に使用され、その指揮命令に従って労務を提供する者(会社等の従業員)は、「業として」には該当しない。
B × (社会保険労務士法2条の2第1項)社会保険労務士は補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができるが、「尋問」をすることはできない。
C × (社会保険労務士法24条1項、社会保険労務士法詳解)「その業務に関し必要な報告」とは、法令上義務付けられているものであると否とを問わず、開業社会保険労務士又は社会保険労務士法人の社員の業務に関する一切の事項、例えば受託の内容、処理経過等、業務に関する諸帳簿、「事務所の経営状態等」についての報告をいう。
D 〇 (社会保険労務士法25条の16)本肢のとおりである。
E × (社会保険労務士法25条の22の3第3項)「社会保険労務士法人の解散及び清算を監督する裁判所は、厚生労働大臣に対し、意見を求め、又は調査を嘱託することができる。」とされているが、必ず厚生労働大臣に対し、意見を求めなければならないわけではない。
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step3 コメント
・択一式の社会保険一般常識の問5は、社労士法からの出題でした。正解肢のDは見逃しがちな論点であり、Bも条文を意識して読み込めていないと誤りに気付かないため、この2択まで絞れても最終判断で誤ってしまったという方が多かったのではないかと思われます。
明日もがんばりましょう。
2021年11月24日
55問目は、択一式の厚生年金保険法です。
正答率57%の問題です。
<問題( 択一式 厚年 問8 )>
〔問〕 厚生年金保険法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
A 育児休業を終了した被保険者に対して昇給があり、固定的賃金の変動があった。ところが職場復帰後、育児のために短時間勤務制度の適用を受けることにより労働時間が減少したため、育児休業等終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬をもとに計算した結果、従前の標準報酬月額等級から2等級下がることになった場合は、育児休業等終了時改定には該当せず随時改定に該当する。
B 60歳台前半の老齢厚生年金の受給権者が同時に雇用保険法に基づく基本手当を受給することができるとき、当該老齢厚生年金は支給停止されるが、同法第33条第1項に規定されている正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合などの離職理由による給付制限により基本手当を支給しないとされる期間を含めて支給停止される。
C 63歳の被保険者の死亡により、その配偶者(老齢厚生年金の受給権を有し、65歳に達している者とする。)が遺族厚生年金を受給したときの遺族厚生年金の額は、死亡した被保険者の被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額の4分の3に相当する額と、当該遺族厚生年金の受給権者の有する老齢厚生年金の額に3分の2を乗じて計算した額のうちいずれか多い額とする。
D 老齢厚生年金における加給年金額の加算の対象となる配偶者が、障害等級1級若しくは2級の障害厚生年金及び障害基礎年金を受給している間、当該加給年金額は支給停止されるが、障害等級3級の障害厚生年金若しくは障害手当金を受給している場合は支給停止されることはない。
E 老齢厚生年金に配偶者の加給年金額が加算されるためには、老齢厚生年金の年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上という要件があるが、当該被保険者期間には、離婚時みなし被保険者期間を含めることはできない。
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step1 正解は・・・
E
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step2 解説
A × (法23条の2第1項)本肢の場合には、随時改定には該当しない。
B × (法附則7条の4、法附則11条の5)60歳台前半の老齢厚生年金の受給権者については、「基本手当を受給することができるとき」ではなく「求職の申込みをしたとき」は、求職の申込みがあった月の翌月から当該老齢厚生年金は支給停止される。また、正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合などの離職理由による給付制限により基本手当を支給しないとされる期間については、支給停止の解除(事後精算)の対象となり、「支給停止が行われなかったものとみなされる」。
C × (法60条1項)65歳以上の遺族配偶者に係る遺族厚生年金の額は、死亡した被保険者の被保険者期間を基礎として計算した老齢厚生年金の額の4分の3に相当する額(原則額)と「原則額に3分の2を乗じて得た額と当該遺族厚生年金の受給権者の老齢厚生年金の額に2分の1を乗じて得た額を合算した額」のうちいずれか多い額とされる。
D × (法46条6項、令3条の7)加給年金額の対象となる配偶者が、3級の障害厚生年金の支給を受けることができるときは、その間、加給年金額は支給停止となる。
E 〇 (法44条1項、法78条の11)本肢のとおりである。加給年金額の加算の要件である「老齢厚生年金の計算の基礎となる被保険者期間の月数240以上には、離婚時みなし被保険者期間及び被扶養配偶者みなし被保険者期間は含まれない。
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step3 コメント
・択一式の厚生年金保険法の問8は、正解肢であるEが比較的容易に解答できる内容ですが、Aをはじめとして、他の選択肢の内容がやや細かく、迷いが生じてしまう恐れがあります。
明日もがんばりましょう。
2021年11月23日
54問目は、択一式の労災保険法です。
正答率57%の問題です。
<問題( 択一式 労災 問5 )>
〔問〕 業務上の災害により既に1上肢の手関節の用を廃し第8級の6(給付基礎日額の503日分)と障害等級を認定されていた者が、復帰直後の新たな業務上の災害により同一の上肢の手関節を亡失した場合、現存する障害は第5級の2(当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の184日分)となるが、この場合の障害補償の額は、当該障害の存する期間1年につき給付基礎日額の何日分となるかについての次の記述のうち、正しいものはどれか。
A 163.88日分 B 166.64日分 C 184日分
D 182.35日分 E 182.43日分
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step1 正解は・・・
A
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step2 解説
(則14条5項)本肢の場合、加重の規定によって給付基礎日額を決定することとなり、障害補償給付の額は、加重後の障害補償年金から加重前の障害補償一時金の額を25で除して得た額を差し引いた額となる。したがって、第5級の2(給付基礎日額の184日分)-第8級の6(給付基礎日額の503日×1/25)=給付基礎日額の163.88日分となる。
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step3 コメント
・択一式の労災保険法の問5は、加重障害の給付額の計算問題でした。既存障害と新たな障害がどちらも年金か、一時金であれば、単に差し引くだけですが、既存障害が一時金で新たな障害が年金の場合には、上記解説の計算式になります。ここは、第1級~第7級が年金で、第8級~第14級が一時金であることと、上記の計算式さえわかっていれば正解できる問題です。
明日もがんばりましょう。
2021年11月22日
53問目は、選択式の労働基準法です。
正答率85&58%の問題です。
※選択式労基B=85%、C=58%(Bは正答率がCより高いものの同じカテゴリーですので、Cの正答率に合わせここで掲載しています。)
<問題( 選択式 労基 BC )>
最高裁判所は、歩合給の計算に当たり売上高等の一定割合に相当する金額から残業手当等に相当する金額を控除する旨の定めがある賃金規則に基づいてされた残業手当等の支払により労働基準法第37条の定める割増賃金が支払われたといえるか否かが問題となった事件において、次のように判示した。
「使用者が労働者に対して労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったとすることができるか否かを判断するためには、割増賃金として支払われた金額が、 B に相当する部分の金額を基礎として、労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになるところ、その前提として、労働契約における賃金の定めにつき、 B に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である[…(略)…]。そして、使用者が、労働契約に基づく特定の手当を支払うことにより労働基準法37条の定める割増賃金を支払ったと主張している場合において、上記の判別をすることができるというためには、当該手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていることを要するところ、当該手当がそのような趣旨で支払われるものとされているか否かは、当該労働契約に係る契約書等の記載内容のほか諸般の事情を考慮して判断すべきであり[…(略)…]、その判断に際しては、当該手当の名称や算定方法だけでなく、[…(略)…]同条の趣旨を踏まえ、 C 等にも留意して検討しなければならないというべきである。」
step1 次の選択肢の中から答を選んでください。
Bの選択肢
⑦ 家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金
⑪ 通常の労働時間の賃金
⑬ 当該歩合給
⑰ 平均賃金にその期間の総労働時間を乗じた金額
Cの選択肢
⑫ 当該手当に関する労働者への情報提供又は説明の内容
⑭ 当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け
⑮ 同種の手当に関する我が国社会における一般的状況
⑳ 労働者に対する不利益の程度
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step2 正解は・・・
C → ⑭ 当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け(令2.3.30最高裁第一小法廷判決国際自動車事件)
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step3 コメント
・選択式の労働基準法のB及びCは、令和2年3月30日判決の国際自動車事件からの出題でした。誰もが気になる労働基準法の選択式の判例の問題ですが、Bの「⑪ 通常の労働時間の賃金」については、他の判例でも見られる内容であり、他に惑わされるような選択肢も無いことから、多くの人が出来ていました。Cの「⑭ 当該労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置付け」については、Cの前の文面に「当該手当の名称や算定方法だけでなく」という文言がヒントになります。意味が最も通る選択肢となると⑭になりますので、半数以上の方が正解できていました。
明日もがんばりましょう。