2021年04月
2021年04月25日
インプット講義を受講していただいている方からの「質問カード」で、これはという質問を取り上げて、ご質問があった事項とその回答を記載する「学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問」の4回目です。
第4回は、「派遣労働者」に関する質問です。
【質問内容及び回答】
Q1.派遣労働者については、まず派遣会社に登録することになると思いますが、登録しているだけでは、雇用関係は発生せず、実際に派遣先で働く都度雇用関係が発生するということでよろしいでしょうか。
A1.正社員やパート・アルバイト、契約社員は勤務先企業と直接、「雇用契約」を結びますが、派遣労働者の場合は「派遣会社(派遣元企業)」と「派遣先企業」という2つの会社が登場します。派遣労働者にとって、派遣会社は雇用契約を結ぶ「雇用主」であり、派遣先企業は実際に仕事をする「勤務先」となります。
派遣会社は派遣労働者に仕事の紹介をしたり、派遣先企業との様々なやりとりや折衝、派遣労働者への給与の支払いや研修などを通じて、派遣労働者をバックアップする立場です。一方、派遣先企業は派遣労働者が実際に就業する勤務先であるため、派遣労働者に対し、直接、業務の指示・命令を行います。
派遣労働者は派遣元企業と雇用契約を結びますが、派遣会社にスタッフ登録した時点では、労働していませんので雇用契約は結ばれていません。派遣先企業が決定し、業務を開始する日に雇用契約が発生し、派遣期間の終了とともに雇用契約は終了します。
Q2.派遣労働者については派遣先の業種にかかわらず、派遣元会社の業種であるサービス業として扱うということでよろしいでしょうか。
A2.労働者派遣業は、日本標準産業分類(平成25年(2013年)10月改定) の大分類で「R.サービス業(他に分類されないもの)」とされ、中分類で「91職業紹介・労働者派遣業」とされています。中分類の説明としては、「主として労働者に職業を斡旋する事業所及び労働者派遣業を行う事業所が分類される。」とあり、主として派遣するために雇用した労働者を、派遣先事業所からその業務の遂行等に関する指揮命令を受けてその事業所のための労働に従事させることを業とする事業所を指しています。なお、主として「請負」によって各種事業を行っている事業所、「自らその業務の遂行等に関する指揮命令を行っている」事業所は、経済活動の種類によりそれぞれの産業に分類されます。
したがって、派遣労働者については派遣先の業種にかかわらず、派遣元会社の業種であるサービス業として扱うということになります。
Q3.派遣労働者の労働時間、休憩、休日については、派遣先に責任が生じるということですが、そうすると36協定や変形労働時間制の協定を派遣元と締結することに違和感を感じます。労使協定については、別物として考え、派遣先と締結する必要がある「休憩時間の一斉付与の適用除外」を例外として押さえた方がよろしいのでしょうか。
A3.労働者派遣法は、労働基準法等に関して、原則、雇用契約の当事者である派遣元事業主が責任を負うこととした上で、派遣先事業主が責任を負う場合については、例外として規定を設けています。
派遣先が責任を負う主なものとしては、公民権行使の保障(労働基準法第7条)、労働時間(同法32条)、1カ月単位の変形労働時間制(同法32条の2)、フレックスタイム制(同法32条の3)、1年単位の変形労働時間制(同法32条の4)、休憩(同法34条)、休日(同法35条)、時間外及び休日の労働(同法36条)、労働時間及び休憩の特例(同法40条)、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用除外(同法41条)等が挙げられます。
ただし、就業規則の定めについては派遣元の事業場で作成し、労使協定等の規定に関しては、派遣元の事業場で協定するように定めています。そこで、変形労働時間制やフレックスタイム制、時間外・休日労働の協定や届出の手続は、派遣元のものが適用されることとなります。すなわち、派遣元が派遣労働者の労働時間等の枠組みを決定し、派遣先がその枠組みに従って労働時間を管理することになります。
派遣先企業から受ける質問の多いものの例として、「時間外労働の上限時間については、当社(派遣先企業)の36協定に基づき、当社が直接雇用している他の労働者と同様の時間外労働を命じても構わないものでしょうか。」という類の質問です。しかし、この回答としては、「派遣先企業の36協定に基づき、時間外労働を命じることはできません。派遣元企業の36協定に基づき、時間外労働を定めてください。」となります。
Q4.労働基準法テキスト100ページに「派遣先が一斉付与の適用除外の事業に該当するときは、休憩時間を一斉に付与する必要はない」とありますが、こちらの扱いを例外としてみてよろしいでしょうか。
A4.労働基準法は休憩時間の与え方について「休憩時間は一斉に与えなければならない(労働基準法34条2項)」とし、一定の業種(運輸交通業、商業、金融・広告業、映画・演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業、官公署等)については、一斉に休憩時間与えなくてもよい旨の例外を設けています(同法40条、同則31条)。この例外が適用されない業種については、「一斉休憩の適用除外」の書面による協定を、派遣先企業で結べば、一斉に休憩を与えなくてもよいことになります。というのも、労働者派遣法は、休憩時間に関しては、「派遣先の事業のみを使用者としてみなして適用する」ことを定めているからです(労働者派遣法44条2項)。したがって、「派遣先が一斉付与の適用除外の事業に該当するときは、(必然的に)休憩時間を一斉に付与する必要はない」ことになります。この場合、一斉付与適用除外の企業に派遣労働者を派遣する際に、派遣先企業は改めて何らかの手続きをとる必要はありません。
【参考】労働者派遣法44条2項
派遣中の労働者の派遣就業に関しては、派遣先の事業のみを、派遣中の労働者を使用する事業とみなして、労働基準法第7条、第32条、第32条の2第1項、第32条の3第1項、第32条の4第1項から第3項まで、第33条から第35条まで、第36条第1項及び第6項、第40条、第41条、第60条から第63条まで、第64条の2、第64条の3、第66条から第68条まで並びに第141条第3項の規定並びに当該規定に基づいて発する命令の規定(これらの規定に係る罰則の規定を含む。)を適用する。
2021年04月24日
「ランチタイム・スタディ2021統計数値」の91日目は、「平成29年就労条件総合調査結果の概況」から「定年制及び定年後の措置」の推定予想問題です。
<問題(定年制及び定年後の措置)>
〔問〕 定年制及び定年後の措置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。なお、本問は「平成29年就労条件総合調査結果の概況」を参照しており、当該調査による用語及び統計等を利用している。
A 定年制を定めている企業割合は9割を超えており、これを定年制の定め方別にみると、「一律に定めている」がほとんどである。
B 一律定年制を定めている企業について、「65歳以上」を定年年齢とする企業割合は、2割弱となっており、企業規模別にみると企業規模が大きいほど低く、産業別にみると、宿泊業,飲食サービス業が最も高い。
C 一律定年制を定めている企業のうち、勤務延長制度若しくは再雇用制度若しくは両方の制度がある企業割合は9割を超えており、これを企業規模別にみると、30人以上のすべての企業において、9割を超えている。
D 一律定年制を定めている企業のうち、勤務延長制度若しくは再雇用制度若しくは両方の制度がある企業割合を制度別にみると、「勤務延長制度のみ」の企業割合は約1割、「再雇用制度のみ」の企業割合は約7割、「両制度併用」の企業割合は約1割となっている。
E 一律定年制を定めており、かつ勤務延長制度又は再雇用制度がある企業のうち、最高雇用年齢を定めている企業割合は、勤務延長制度がある企業では8割を超え、再雇用制度がある企業では9割を超えている。
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step1 正解は・・・
E
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step2 解説
A 〇 (平成29年就労条件総合調査結果の概況) 本肢のとおりである。定年制を定めている企業割合は95.5%となっており、これを定年制の定め方別にみると、「一律に定めている」が97.8%、「職種別に定めている」が2.2%となっている。
B 〇 (平成29年就労条件総合調査結果の概況) 本肢のとおりである。一律定年制を定めている企業について、「65歳以上」を定年年齢とする企業割合は、17.8%となっている。企業規模別にみると、1,000人以上が6.7%、300~999人が9.4%、100~299人が12.5%、30~99人が20.5%となっている。産業別にみると、宿泊業,飲食サービス業が29.8%で最も高く、複合サービスが1.6%で最も低くなっている。
C 〇 (平成29年就労条件総合調査結果の概況) 本肢のとおりである。一律定年制を定めている企業のうち、勤務延長制度若しくは再雇用制度若しくは両方の制度がある企業割合は92.9%となっている。企業規模別にみると、1,000人以上が97.5%、300~999人が96.7%、100~299人が96.8%、30~99人が91.3%となっている。
D 〇 (平成29年就労条件総合調査結果の概況) 本肢のとおりである。一律定年制を定めている企業のうち、勤務延長制度若しくは再雇用制度若しくは両方の制度がある企業割合を制度別にみると、「勤務延長制度のみ」の企業割合は9.0%、「再雇用制度のみ」の企業割合は72.2%、「両制度併用」の企業割合は11.8%となっている。
E × (平成29年就労条件総合調査結果の概況) 一律定年制を定めており、かつ勤務延長制度又は再雇用制度がある企業のうち、最高雇用年齢を定めている企業割合は、勤務延長制度がある企業で「56.9%」、再雇用制度がある企業で「80.8%」となっている。なお、最高雇用年齢を定めている企業における最高雇用年齢をみると、「66歳以上」を最高雇用年齢とする企業割合は、勤務延長制度がある企業で16.9%、再雇用制度がある企業で9.8%となっている。
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step3 コメント
・「平成29年就労条件総合調査結果の概況」から「定年制及び定年後の措置」の問題です。あまり興味のわかない内容だと思われますが、ここではほとんどの企業が「再雇用制度のみ」を採用しているというDの箇所が最重要となります。
明日もがんばりましょう。
2021年04月23日
「ランチタイム・スタディ2021統計数値」の90日目は、「平成29年就労条件総合調査結果の概況」から「定年制及び定年後の措置」の調査記載内容です。
定年制及び定年後の措置
【平成29年就労条件総合調査結果の概況】
(3)勤務延長制度及び再雇用制度の実施状況
一律定年制を定めている企業のうち、勤務延長制度若しくは再雇用制度若しくは両方の制度がある企業割合は92.9%となっている。
企業規模別にみると、1,000人以上が97.5%、300~999人が96.7%、100~299人が96.8%、30~99人が91.3%となっている。
制度別にみると、「勤務延長制度のみ」の企業割合は9.0%、「再雇用制度のみ」の企業割合は72.2%、「両制度併用」の企業割合は11.8%となっている。
(4)勤務延長制度、再雇用制度の最高雇用年齢
一律定年制を定めており、かつ勤務延長制度又は再雇用制度がある企業のうち、最高雇用年齢を定めている企業割合は、勤務延長制度がある企業で56.9%、再雇用制度がある企業で80.8%となっている。
最高雇用年齢を定めている企業における最高雇用年齢をみると、「66歳以上」を最高雇用年齢とする企業割合は、勤務延長制度がある企業で16.9%、再雇用制度がある企業で9.8%となっている。
明日もがんばりましょう。
2021年04月22日
「ランチタイム・スタディ2021統計数値」の89日目は、「平成29年就労条件総合調査結果の概況」から「定年制及び定年後の措置」の調査記載内容です。
定年制及び定年後の措置
【平成29年就労条件総合調査結果の概況】
(1)定年制
定年制を定めている企業割合は95.5%となっており、これを定年制の定め方別にみると、「一律に定めている」が97.8%、「職種別に定めている」が2.2%となっている。
(2)一律定年制における定年年齢の状況
一律定年制を定めている企業について、「65歳以上」を定年年齢とする企業割合は、17.8%となっている。
企業規模別にみると、1,000人以上が6.7%、300~999人が9.4%、100~299人が12.5%、30~99人が20.5%となっている。
産業別にみると、宿泊業,飲食サービス業が29.8%で最も高く、複合サービスが1.6%で最も低くなっている。
明日もがんばりましょう。
2021年04月21日
<問題(高齢者の雇用の動向)>
〔問〕 高齢者の雇用の動向に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
A 「平成28年版厚生労働白書」によると、65歳以上の非正規の職員・従業員の雇用者について、現在の雇用形態についた主な理由(「その他」を除く。)をみると、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が最も多く、次いで「家計の補助・学費等を得たいから」、「専門的な技能等をいかせるから」が続いている。
B 「令和元年版高齢社会白書」によると、高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18 歳未満の未婚の者が加わった世帯)の平均所得(平成28(2016)年の一年間の所得)は、全世帯から高齢者世帯と母子世帯を除いたその他の世帯の5割弱となっている。
C 「平成29年版高齢社会白書」によると、65歳以上の者の役員を除いた雇用者の雇用形態をみると、他の年齢層に比べて非正規の職員・従業員の割合がきわめて大きくなっており、2016年には全体の約4分の3を占めている。
D 「平成29年版高齢社会白書」によると、60歳以上の高齢者の自主的社会活動への参加状況をみると、何らかの自主的な活動に参加している高齢者の割合は、減少傾向を示している。
E 「平成24年版高齢社会白書」によると、政府は、高齢者の意欲や能力を最大限活かすためにも、「支えが必要な人」という高齢者像の固定観念を変え、意欲と能力のある65歳以上の者には支える側にまわってもらう意識改革が必要であるとしている。
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step1 正解は・・・
D
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step2 解説
A 〇 (平成28年版厚生労働白書) 本肢のとおりである。65歳以上の非正規の職員・従業員の雇用者について、現在の雇用形態についた主な理由別にみると、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が31.7%と最も高く、次いで「家計の補助・学費等を得たいから」が20.1%、「専門的な技能等をいかせるから」が14.9%などとなっている。(H29-5C)
B 〇 (令和元年版高齢社会白書) 高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、又はこれに18 歳未満の未婚の者が加わった世帯)の平均所得(平成28(2016)年の1年間の所得)は318.6万円で、全世帯から高齢者 世帯と母子世帯を除いたその他世帯(663.5万 円)の5割弱となっている。(H29-5A改)
C 〇 (平成29年版高齢社会白書) 本肢のとおりである。会社などの役員を除く65歳以上の雇用者について雇用形態をみると、非正規の職員・従業員は多く、かつ、増加傾向である。平成28(2016)年では正規の職員・従業員が99 万人に対して、非正規の職員・従業員が301万人であり、役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は75.3%となっている(H29-5E改)
D ☓ (平成29年版高齢社会白書) 60歳以上の高齢者の自主的社会活動への参加状況をみると、何らかの自主的な活動に参加している高齢者の割合は、「増加」傾向を示している。自主的なグループ活動への参加状況についてみると、60歳以上の高齢者のうち61.0%(平成25(2013)年)が何らかのグループ活動に参加したことがあり、10年前(15(2003)年)と比べると6.2 ポイント、20 年前(5(1993)年)に比べると18.7ポイント増加している。なお、具体的な活動についてみると、「健康・スポーツ」(33.7%)、「趣味」(21.4%)、「地域行事」(19.0%)の順となっており、特に「健康・スポーツ」は10年前に比べ8.4ポイント、20年前に比べ14.8 ポイント増加している。(H29-5B改)
E 〇 (平成24年版高齢社会白書) 本肢のとおりである。「高齢者」は、支えが必要であるとする考え方や社会の在り様は、意欲と能力のある現役の65歳以上の者の実態から乖離しており、高齢者の意欲と能力を活用する上で阻害要因ともなっているとしている。(H25-4C)
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step3 コメント
・高齢者の雇用の動向からの出題です。主に高齢社会白書(内閣府)からの出題であり、やや難しいかもしれませんが、すべて過去に出題されています。①高齢者が現在の雇用形態についた主な理由は、「自分の都合のよい時間に働きたいから」、②高齢者世帯の平均所得は、一般世帯の5割弱、③雇用者の非正規の職員・従業員の割合は全体の約4分の3、④何らかの自主的な活動に参加している高齢者の割合は増加傾向、とおおまかなところは押さえておきましょう。
明日もがんばりましょう。