2020年04月
2020年04月27日
「ランチタイム・スタディ2020統計数値」の45日目は、「平成31年及び平成29年就労条件総合調査結果の概況」から「労働時間・休日等の動向」の調査記載内容です。
労働時間・休日等の動向
【平成31年及び平成29年就労条件総合調査結果の概況】
(1)年次有給休暇の取得状況
平成30年(又は平成29会計年度)1年間に企業が付与した年次有給休暇日数(繰越日数は除く。)は、労働者1人平均18.0日、そのうち労働者が取得した日数は9.4日で、取得率は52.4%となっている。
取得率を企業規模別にみると、1,000人以上が58.6%、300~999人が49.8%、100~299人が49.4%、30~99人が47.2%となっている。
(2)年次有給休暇の時間単位取得制度
年次有給休暇を時間単位で取得できる制度がある企業は18.7%となっている。
明日もがんばりましょう。
2020年04月26日
「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて
④ 休み方と「働きがい」との好循環の実現に向けて
就業を続けることによって、次第に疲労やストレスが蓄積してパフォーマンスが低下していくが、リカバリー経験によって活力などを回復・向上させる機会を得ることで、後日再び就業する際に良質なパフォーマンスを発揮することができる。
リカバリー経験(休み方)には、仕事からの「心理的距離」、くつろいでいる状態である「リラックス」、自己啓発を行う「熟達」、余暇に行うことを自ら決められる「コントロール」といった4つの種類があり、これらのリカバリー経験のできている者は、仕事中の過度なストレスや疲労を回復させ、再び就業する際には働きがい(ワーク・エンゲイジメント)や労働生産性の向上を実現させる可能性が示唆された。
こうした効果は、労働強度が高い人手不足企業において相対的に強い可能性があり、こうした企業においてこそ、従業員がリカバリー経験(休み方)をできるように様々な支援を講じていくことが有用だと考えられる。
我が国では、「リラックス」や「コントロール」と比べて「心理的距離」について、出来ていないと自己評価する者が多い。
これを属性別にみると、「心理的距離」「リラックス」「コントロール」については、男性、30歳台~50歳台、係長・主任相当職や課長相当職、50人超~300以下の中規模企業に勤める方において、出来ていると回答する者が少ない。
また、「熟達」については、属性にかかわらず行っている者が少ないが、女性、若者、地方圏、非役職者、小規模企業に勤める方において、特に少ない状況にある。
働きがい(ワーク・エンゲイジメント)が高い者では低い者と比べて、仕事と余暇時間の境目のマネジメントが「出来ている」と自己評価する者の構成比が高く、仕事と余暇時間の境目をマネジメントする能力(バウンダリー・マネジメント)は、働きがい(ワーク・エンゲイジメント)を向上させる観点からも有用であることが示唆される。
働きがい(ワーク・エンゲイジメント)が高い者が心掛けている取組としては、「自己管理力を高める」「普段からプライベートの話を職場で出来る人間関係を構築する」「余暇時間に仕事が気にならないよう計画的に業務処理する」といった業務遂行に関連する内容が多い。
働きがいの向上に向けて重要な鍵となっているバウンダリー・マネジメントについて、労使ともに、その重要性について十分に認識できていない状況にある。
働く時はしっかりと働き、休む時はしっかりと休むことで、後日再び就業する際の良質なパフォーマンスの発揮に結びつけていき、その両方の時の間にポジティブな循環を生み出していくといった視点は、今後もその重要性が高まっていくことが予想されるが、まずは当該能力の重要性に関する労使の認識を深めていくことが課題である。
これで終わりです。
お疲れ様でした。
「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて
③ 「働きがい」をもって働ける環境の実現に向けた課題
ワーク・エンゲイジメント・スコアを被説明変数とした計量分析を行ったところ、働く方の仕事に対する認識については、「仕事を通じて成長できていると感じる」や「自己効力感(仕事への自信)が高い」「勤め先企業でのキャリア展望が明確になっている」等の「個人の資源(心理的資本)」に相当するものや、「労働時間の少なくとも半分以上はハイスピードで仕事している」「自身に業務が集中している」といった「挑戦的なストレッサー」に相当するもの、「仕事から疲労回復するのに十分な長さの余暇時間がある」といった休み方に関するもの、「仕事の裁量度が高い(仕事を進める手段や方法を自分で選べる)」「仕事遂行に当たっての人間関係が良好」といった「仕事の資源」に相当するものにおいて、統計的有意な正の相関があることが確認された。
企業が実施する雇用管理の取組については、「業務遂行に伴う裁量権の拡大」「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」「有給休暇の取得促進」「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」「仕事と病気治療との両立支援」といった「仕事の資源」に相当するものや「働きやすさ」の向上に資する取組において、ワーク・エンゲイジメント・スコアと統計的有意な正の相関があることが確認された。
また、仕事を通じた成長実感の向上の観点からみると、業務上の目標管理に当たっては、達成にある程度の努力を要する難易度で設定されていることが肝要であることが示唆されるが、これについては企業の想定と比較し、社員の認識している難易度が低くなっている傾向にあり、労使でよく話し合っていくことが重要である。
フィードバックとの関係をみると、自己効力感や仕事を通じた成長実感の向上といった観点からは、日常業務に対する上司からのフィードバックが実施され、その頻度が相対的に高いこと、その上で、手法としては、働く方の具体的な行動について、行動した内容の重要性や意義について説明しながら、行動した直後に誉めることが肝要であることが示唆された。
さらに、勤め先企業におけるキャリア展望の明確性を高める観点からは、日常業務の中や様々なライフステージの変化に直面した際に、働く方の今後のキャリア展望や働き方への希望について、労使間でしっかりと話し合って意思疎通を図り、その頻度が高いことが肝要である。
ロールモデルをめぐる状況についてみると、ロールモデルとなる先輩社員がいる39歳以下の若者は、必ずしも多い状況にはなく、企業が認識している以上に少ない。
ロールモデルとなる先輩社員をみつけるためには、その前提として、働く方自身の勤め先企業におけるキャリア展望が明確になっていることが肝要であることが示唆された。
管理職のワーク・エンゲイジメント・スコアをみると、女性の方が高い状況にある。
「勤め先での管理職登用の機会は、性別・学歴・勤続年数・年齢等にかかわらず、幅広い多くの人材にあると感じる」「性別にかかわりなく、社員の能力発揮を重視する企業風土があると感じる」といった所感をもった管理職のワーク・エンゲイジメント・スコアは、男女いずれにおいてもより高い水準を示している。
このように公正さに関する認識は管理職に限らず全ての労働者にとって重要であり、非正規雇用の方であって、自分と同様の働き方をしている正規雇用の方への評価と比較し、自分の働き方に対する評価が公正だと感じた方は、同評価が不合理だと感じた方と比較し、働きがいが高くなる可能性が示唆される。
以上、ワーク・エンゲイジメントの概念を用いて、「働きがい」をもって働ける環境の実現に向けて考察してきたが、あくまでも全体的な傾向を分析したものであるため、個々の企業における職場環境の改善に際しては、本書の分析も参考にしつつ、労使双方が職場の現状や課題を共有した上で議論していくことが重要である。
第16回(最終回)へ続く
2020年04月25日
「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて
② 「働きがい」と様々なアウトカムとの関係
働きがい(ワーク・エンゲイジメント)と組織コミットメント(企業の理念等や担当業務の意義等を理解した上で、企業の組織風土に好感をもっている状態)、従業員の離職率の低下や新入社員の定着率(入社3年後)、個人の労働生産性向上実感や企業の労働生産性(マンアワーベース)、仕事に対する自発性や他の従業員に対する積極的な支援(役割外のパフォーマンス)、顧客満足度には正の相関があることがうかがえる。
因果関係の方向が逆である可能性にも留意が必要であるが、働きがい(ワーク・エンゲイジメント)を向上させることは、これらのアウトカム指標の向上につながる可能性が示唆される。
また、仕事中の過度なストレスや疲労と働きがい(ワーク・エンゲイジメント)には負の相関があることがうかがえ、計量分析においてはこれに加え、「出勤日数(月平均)」「労働時間(月平均)」「通勤時間(月平均)」は、仕事中に過度なストレスや疲労を感じる度合いと統計的有意に正の相関が、「有給休暇の取得率」は、同度合いと統計的有意に負の相関があることが確認された。
さらに、ワーカホリックな状態と仕事中の過度なストレスや疲労には、強い正の相関があることが窺えた。
一方で、働きがい(ワーク・エンゲイジメント)とワーカホリックな状態の間には正の相関が確認され、状況によっては働きがい(ワーク・エンゲイジメント)が高い状態にある者がワーカホリックな状態に陥りやすいおそれがある。
したがって、企業は、ワーカホリックな労働者を称えるような職場環境を見直す等、働き方をめぐる企業風土の在り方についても検討していく必要がある。
第15回へ続く
「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて
① ワーク・エンゲイジメントに着目した「働きがい」をめぐる現状
我が国の働きがいについて、「ワーク・エンゲイジメント」という指標を用いて属性別にみると、正社員については、高年齢、高役職の方が「働きがい」の高い傾向にある。
これは、加齢又は職位・職責の高まりに伴って、自己効力感(仕事への自信)や仕事を通じた成長実感が高まることに加えて、仕事にコントロールが効きやすくなることや、難易度が高めの仕事に挑戦する機会が増えることなどが影響している可能性が考えられる。
職種別にみると「教育関連専門職」「管理職」等といった非定型的業務の比重が高いと思われる職種では、働きがい(ワーク・エンゲイジメント)が高い傾向にある。
なお、我が国の働きがい(ワーク・エンゲイジメント)は相対的に低い状況にあるという国際比較もあるが、各国の文化的特徴等の影響を受ける可能性があるため、一定の幅をもって解釈する必要がある。
非正規雇用の方については、不本意非正規雇用労働者で労働者派遣事業所の派遣社員や契約社員・嘱託、男性、35~44歳を中心として働きがい(ワーク・エンゲイジメント)が低い傾向にあるが、大多数を占める本意非正規雇用労働者では、正社員よりも高くなっている。
年収と働きがい(ワーク・エンゲイジメント)との関係をみると、39歳以下の正社員では、年収の増加に伴い、働きがい(ワーク・エンゲイジメント)が上昇する傾向がみられる一方で、40歳台以上では、こうした傾向がみられない結果となった。
先行研究を踏まえると、基本的に年収と働きがい(ワーク・エンゲイジメント)には直接の相関関係はなく、39歳以下で一見関係があるようにみえるものの、これは、年収の増加を通じた、仕事の中での成長実感や自己効力感の高まりによる効果を捉えている可能性が考えられる。
働きがい(ワーク・エンゲイジメント)は日単位等の様々な時間軸で変化することが指摘されているものの、現在と1年前の働きがい(ワーク・エンゲイジメント)には大きな変動がみられないため、一時的な状態ではなく、持続的かつ安定的な状態を捉えるものであることが示唆される。
第14回へ続く