2017年06月27日
「第2次ランチタイム・スタディ」の第86問です。
「第2次ランチタイム・スタディ」の主旨については、2月21日の佐藤塾ブログの『第2次「ランチタイム・スタディ」開始のお知らせ(ブログの記事のご案内)』をご覧ください。
さて、86問目は、択一式の労働基準法です。
正答率22%の問題で難問です。
※難問とは、合格者でも正答率が50%を割ってしまっている問題を指します。
※約5人に1人しか正解しなかった問題です。
<問題( 択一式 労基 問4 )>
〔問〕 労働基準法に定める賃金等に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
A 労働基準法第24条第1項に定めるいわゆる賃金直接払の原則は例外のない原則であり、行政官庁が国税徴収法の規定に基づいて行った差押処分に従って、使用者が労働者の賃金を控除のうえ当該行政官庁に納付することも、同条違反となる。
B 過払いした賃金を精算ないし調整するため、後に支払わるべき賃金から控除することは、その金額が少額である限り、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれがないため、労働基準法第24条第1項に違反するものではないとするのが、最高裁判所の判例である。
C 退職金は労働者の老後の生活のための大切な資金であり、労働者が見返りなくこれを放棄することは通常考えられないことであるから、労働者が退職金債権を放棄する旨の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであるか否かにかかわらず、労働基準法第24条第1項の賃金全額払の原則の趣旨に反し無効であるとするのが、最高裁判所の判例である。
D 労働協約、就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確である場合の退職手当は、労働基準法第11条に定める賃金であり、同法第24条第2項の「臨時に支払われる賃金」に当たる。
E 労働基準法第24条第2項に定める一定期日払の原則は、期日が特定され、周期的に到来することを求めるものであるため、期日を「15日」等と暦日で指定する必要があり、例えば「月の末日」とすることは許されない。
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step1 正解は・・・
D
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step2 解説
A ☓ (法24条1項、昭25.8.4基収1995号) 賃金が民事執行法や国税徴収法などの法律に基づき差し押えられ、差押債権者が取立権限を取得した場合には、差押債権者に支払ってもよいとされている。
B ☓ (法24条1項、昭44.12.18最高裁第一小法廷福島県教組事件) 本肢は「その金額が少額である限り」としている点が、誤りである。金額が少額であるだけでなく、控除の時期、方法等からみても労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれがないことが必要とされる。
C ☓ (法24条1項、昭48.1.19最高裁第二小法廷判決シンガー・ソーイング・メシーン事件) 退職金債権放棄の意思表示は、それが労働者の自由な意思に基づくものであると認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、「有効である」。
D 〇 (法11条、昭22.9.13発基17号) 本肢のとおりである。なお、「臨時に支払われる賃金」とは、臨時的、突発的事由に基づいて支払われるもの及び支給条件はあらかじめ確定されているが、支給事由の発生が不確定であり、かつ、非常に稀に発生するものをいう。
E ☓ (法24条2項) 「一定の期日」とは、その日が特定される方法が用いられればよい。したがって、例えば月給の場合、必ずしも「15日」等と暦日で指定しなくても「月の末日」とすることは認められる。
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step3 コメント
・択一式の労働基準法の問4は、労働基準法に定める賃金等に関する問題です。B及びCは判例からの出題ということもあり、Eを除く各選択肢の難易度が高く、多くの方がBを解答していました。Bは、条件となる項目が抜け落ちているために誤りとなる訳ですが、正しいと思ってしまうことに無理はなく、少々酷な問題といえます。
明日もがんばりましょう。
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