2017年01月03日

厚生労働省は、「平成27年度の監督指導による賃金不払残業の是正結果」を公表しました。
1年間の残業代不払いの合計額は、なんと約100億円に上るんですね。

この件は、次のように報道されています。
まずはこちらをご覧ください。

去年度の「サービス残業代」約100億円、1348社に指導 (TBSニュース)


この記事を読む限り、サービス残業が以前に比べて増えているという印象になります。
前年度に比べて不払いの「企業数」は増えたことは確かですが、この記事では、「不払い額」や「不払い対象労働者数」の増減には触れていませんので不十分です。

そういう意味では、こちらのニュースの方が正確に伝わる内容です。

残業代不払い100億円下回る  厚労省の15年度是正結果 (アドバンスニュース)


1348社というのは「100万円以上の不払いがあった企業」の数ですから、100万円未満の不払いがあった企業を含めたり、実際には割増賃金不払いでありながら労基署からの監督指導を免れた企業があることを考え合わせると、実態はもっと多額になります。

経営者側から見れば、「ちんたら仕事をしている(仕事の生産性が低い)から残業するハメになったわけで、そんな社員に残業代なんて払いたくない。第一、時給換算で労働価値を決めるのなら仕事ができない社員ほど高給取りになってしまうじゃないか。」という気持ちがあります。

そのため、残業を認めない風潮になり、こういった問題が露出してくるわけです。

しかし、サービス残業の問題は、目先の残業時間を減らすという対処だけでは解決しません。労使がよく話し合って、無駄な会議や報告書をやめることや、仕事の優先順位を付けて無駄な業務を省くことなど、労働生産性を向上させる取り組みと合わせて残業を減らすようにしていかないと根本的な問題は解決しないのです。

先日、こんな相談がありました。
「A社では、残業をした場合、次の日の朝までに書類を提出し上司の印をもらうことになっていますが、その手続きをある社員が怠ってしまっていたので残業代を払わないと上司から言われたそうですが、仕方のないことなんでしょうか?」というものでした。

残業代の支払いは、「手続き」の問題ではなく、「実態」で判断すべきものですから、支払われるべきものである旨、伝えました。実はこの相談は、社員本人からの相談ではなく、その社員の知り合いの第三者からの相談でしたので、社員と上司の双方から話を聞けば、もっと違う観点が出てきたかもしれませんが・・・

今後も、こういった労使に関する様々な問題に対しては、社労士が関与しお役に立てる場面があると思います。

将来のみなさんの社労士としての活躍を待ちわびている企業や社員がきっといるはずです。
こういう報道もひとつの糧として、今後の学習に励んでいってください。



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