2021年04月04日

インプット講義を受講していただいている方からの「質問カード」で、これはという質問を取り上げて、ご質問があった事項とその回答をお知らせする「学習意欲が高まる!素朴な質問・疑問」の第1回です。

1回目は、「労働基準法」の「フレックスタイム制のコアタイム」に関する質問です。


【質問】
労働基準法(テキスト86ページ)のフレックスタイム制について、「労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる」とありますが、始業の時刻、終業の時刻を含めた時間をコアタイムとして設定することは可能なのでしょうか。

例えば9時~18時が就業の会社において9時から10時をコアタイムとして設定することは可能なのでしょうか。

可能であるとすれば労働者の決定に委ねたことにならないのではないかと思い質問させていただきました。



【回答】
フレックスタイム制とは、労働者が日々の始業・終業時刻を労働者自身で決定して働く事ができる制度です。勤務時間をずらすことで、通勤ラッシュを避けることができたり、子供の送り迎えや身内の介護に要する時間を取れるようになるなど、労働者にメリットが大きい制度です。

フレックスタイム制には、コアタイム、フレキシブルタイムを定めることも可能であり、コアタイムとは、労働者が1日のうちで必ず働かなければならない時間帯になります。

フレックスタイム制の事例


コアタイム設けるか否かは任意ですが、これを設ける場合には、その時間帯の開始・終了の時刻を協定で定める必要があります。

コアタイムの時間帯は協定で自由に定めることができ、次のようなことも可能です。
① コアタイムを設ける日と設けない日がある。
② 日によって時間帯が異なる。
③ 「特定の職種の労働者」のみ定める。
④ 個人ごと、課ごと、グループごと等で異なる設定とする。

さて、ご質問の件ですが、フレックスタイム制とは、『就業規則その他これに準ずるもので「始業及び終業の時刻」を労働者の決定に委ねる旨定めること』を指しますので、始業及び終業時刻の両方を労働者の決定に委ねることが必要です。

ゆえに、例えば、始業時刻は決められていて、終業時刻のみ労働者の決定に委ねるものはフレックスタイム制には該当しません。このことから、「例えば9時~18時が就業の会社において9時から10時をコアタイムとして設定する」ということは、実質的に「始業時刻が決められていて、終業時刻のみ労働者の決定に委ねるもの」に該当することになってしまいますので、フレックスタイム制とはいえなくなります。したがって、ご質問の回答の結論としては、「例えば9時~18時が就業の会社において9時から10時をコアタイムとして設定することはできない」ことになります。

では、フレックスタイム制を導入したい会社が、なるべく始業の時刻だけは同じ時刻に設定したい場合に、「例えば9時~18時が就業の会社において9時10分からコアタイムが始まるように、フレキシブルタイムを朝10分しか設けない」ようなことが可能かといえば、これもフレックスタイム制とは認められないことになります。

このように、コアタイムの時間が1日の労働時間とほぼ同程度になるような場合や、フレキシブルタイムの時間帯が極端に短い場合など、労働者が始業及び終業の時刻を自由に決定するという趣旨に反する場合にはフレックスタイム制とはいえなくなるため、コアタイムの設定には注意が必要です。




2021年04月03日

「ランチタイム・スタディ2021統計数値」の73日目は、「「令和元年度雇用均等基本調査」の概況(企業調査)」から「女性の雇用管理の実態」の調査記載内容です。


女性の雇用管理の実態

【「令和元年度雇用均等基本調査」の概況(企業調査)】

(5)セクシュアルハラスメント防止対策の取組

セクシュアルハラスメントを防止するための対策に、「取り組んでいる」企業割合80.2%と、前回調査(平成30年度64.3%)より15.9ポイント上昇した。

規模別にみると、企業規模が大きいほど割合が高い

セクシュアルハラスメントを防止するための対策に取り組んでいる企業の取組内容(複数回答)をみると、
就業規則・労働協約等の書面で内容及び、あってはならない旨の方針を明確化し、周知している」が64.8%と最も高く、
次いで、「当事者等のプライバシー保護に必要な措置を講じ、周知している」が53.2%、
相談・苦情対応窓口を設置している」が52.7%、
「行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、周知している」が51.8%となっている。


(6)妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント防止対策の取組

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するための対策に、「取り組んでいる」企業割合75.7%と、前回調査(68.8%)より6.9ポイント上昇した。

規模別にみると、企業規模が大きいほど割合が高い

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するための対策に取り組んでいる企業の取組内容(複数回答)をみると、
就業規則・労働協約等の書面で方針を明確化し、周知している」が57.9%と最も高く、
次いで、「相談・苦情対応窓口を設置している」が50.5%、
当事者等のプライバシー保護に必要な措置を講じ、周知している」が50.1%となっている。


(7)パワーハラスメント防止対策について

パワーハラスメントを防止するための対策「取り組んでいる」企業割合37.9%、「取組を予定又は検討している」企業割合は34.0%、「取り組んでいない」とする企業割合は28.1%であった。

規模別にみると、企業規模が大きいほど取り組んでいる企業割合が高い


<ポイント>
・この3つは連動して押さえておいてしまいましょう。セクハラ防止対策に取り組んでいる企業割合は約8割、マタハラ防止対策は約7割5分、パワハラ防止対策は約4割です。取り締まる企業側からすると、この3つの中ではセクハラ防止対策が一番多く、次いでパワハラ防止対策が少し少なくなり、パワハラ防止対策は一番遅れていることを理解しておいてください。

・今回、セクハラ防止対策に取り組んでいる企業割合は約6割から約8割へ、マタハラ防止対策は約7割から約7割5分へ、大きく伸びています。なお、パワハラ防止対策は、前回調査では無かったため、伸び率はわかりません。

・いずれも企業規模が大きいほど取り組んでいる企業割合が高くなっています。

・実際の取り組みとしては、「就業規則・労働協約等の書面で周知」が一番多くなっています。ここは割合を覚える必要はありません。



来週もがんばりましょう。



2021年04月02日

「ランチタイム・スタディ2021統計数値」の72日目は、「「令和元年度雇用均等基本調査」の概況(企業調査)」から「女性の雇用管理の実態」の調査記載内容です。


女性の雇用管理の実態

【「令和元年度雇用均等基本調査」の概況(企業調査)】

(3)女性管理職を有する企業割合

女性管理職を有する企業割合についてみると、課長相当職以上の女性管理職(役員を含む。以下同じ。)を有する企業割合51.9係長相当職以上の女性管理職(役員を含む。以下同じ。)を有する企業割合59.4となっている。

女性管理職を有する企業割合を役職別にみると、部長相当職ありの企業は11.0%課長相当職18.4%係長相当職19.5%となっている。

規模別にみると、規模が大きくなるほど、各管理職の女性を有する企業割合が高くなっており、5,000人以上規模では、部長相当職の女性管理職を有する企業が70.0%、課長相当職の女性管理職を有する企業が90.3%となっている。

<ポイント>
・課長相当職以上の女性管理職を有する企業割合は5割を超え、係長相当職以上の女性管理職を有する企業割合は6割を超えていますが、実際に管理職に占める女性の割合は1割台です。

・課長相当職以上の女性管理職を有する企業割合は、企業規模が大きくなるほど高くなるのは当然です。というのも、女性管理職が一人でもいれば、女性管理職を有する企業割合にカウントされますが、従業員が多い企業の方が、それだけ部署も多くなり、女性管理職が登用される機会が増えるからです。ただし、5,000人以上規模企業であっても、部長に女性が一人でも登用されている企業は7割、課長に女性が一人でも登用されている企業は9割というのが現実です。(正社員・正職員に占める女性の割合は、25.7%ですから、5,000人の企業ではだいたい1,250人が女性であるにもかかわらず、部長が全員男性である企業が実に3割に上っています。)


(4)管理職に占める女性の割合

課長相当職以上の管理職に占める女性の割合(以下、「女性管理職割合」という。)は11.9%、係長相当職以上の女性管理職割合は13.7%となり、いずれも前回調査に比べ上昇となった。

それぞれの役職に占める女性の割合は、部長相当職では6.9%課長相当職では10.9%係長相当職では17.1%となり、役員を除く各管理職で調査開始以来最も高くなっている。

規模別にみると、いずれの管理職割合においても10~29人規模が最も高い

課長相当職以上の女性管理職割合を産業別にみると、医療,福祉54.4%)が突出して高くなっており、教育,学習支援業(19.2%)、生活関連サービス業,娯楽業(18.1%)、宿泊業,飲食サービス業(16.9%)と続いている

<ポイント>
・女性管理職割合は約1割です。女性の占める割合は、部長は5%、課長は10%、係長は15%程度です。

・規模別で小規模企業の方が高いのは、人数が少ない分、女性管理職1人当たりのウェートが高くなりますから当然です。「10~29人規模が最も高い」のは、この統計調査が「常用雇用者数10人以上の集計」であるからです。ここは、(3)の企業規模が大きくなるほど、各管理職の女性を有する企業割合が高くなることと混同しないようにしてください。

・女性管理職割合は、医療,福祉が突出して高くなっていますが、54.4%ということは、女性の方が男性よりも管理職が多いということになります。



明日もがんばりましょう。